2005年12月14日から16日まで東京都内で開催された「TRONSHOW2006」では「ユビキタスID」の利用イメージについての展示が多数あった。アクティブ型やパッシブ型の無線ICタグ,PDA型の「ユビキタス・コミュニケータ」,街角の情報ステーション「iBox」といった個々のツールを「ユビキタスID」という共通技術の上で組み合わせることで,新たな社会インフラを作り上げようという構想である。
■アクティブ型無線ICタグを使う「積荷自動認識トラック」
無線ICタグを使って物流業務を効率化することを狙った「積荷自動認識トラック」(
IT Pro関連記事)について報道陣に説明する東京大学の坂村健教授。
積荷自動認識トラックでは,アクティブ型の無線ICタグを搭載したセンシング・ノード「センシングDice」(
IT Pro関連記事)を使い積荷を認識する(右の写真)。
■倉庫内で貨物とフォークリフトの位置情報を管理
海運大手の日本郵船は,倉庫内で貨物とフォークリフトの位置情報を管理する「ユビキタス倉庫自動ロケーションシステム」を展示した(
IT Pro関連記事)。フォークリフトは豊田自動織機が試作した燃料電池フォークリフト「トヨタFCHV-F」で,国内での公開はこれが初となる(
Tech-On!関連記事)。パレットと床面に張り付けた無線ICタグを,フォークリフトに取り付けたリーダー/ライターで読み取る仕組み。日本郵船の大井貨物センターで2004年4月から実証実験が続けられている。
■良くない飲み合わせを警告
モノに無線ICタグを付けて個別認識できるようになると,生活にさまざまなインパクトが生まれる。写真は,「電子お薬手帳」(
IT Pro関連記事)の展示の一幕。薬と食べ物の危険な組み合わせを警告するシステムだ。いつも服用している薬と,これから飲もうとしているグレープフルーツ・ジュースの無線ICタグをシステムに読み込ませると,システムは「この組み合わせはよくない」と警告を出す。
■センサ・ネットで火事などを検出
アクティブ型無線ICタグ「Dice」とセンサ・ネットワーク用の技術仕様「pT-Engine」を利用して構築したセンサ・ネットワークを説明する坂村氏。並んでいる棒の先の球形のケースに温度センサ搭載のDiceが組み込んである。一部の温度が一定以上になると警告を発する。背後に温度分布のグラフ表示が見えている。
■アクティブ型無線ICタグ「Dice」
アクティブ型の無線ICタグ。双方向の通信が可能で,センサ・ネットワークにも適用できる。
■商品説明機能を持たせたアンテナ内蔵の陳列ケース
無線ICタグ用リーダーを搭載したガラス製陳列ケース。凸版印刷が店舗向けに開発した。商品を棚から手に取ると,該当する商品の説明をコンピュータ画面に表示する。ブティックなどでの使用を想定している。
■ユビキタス・コミュニケータを使った「電子作業マニュアル」
「積荷自動認識トラック(
IT Pro関連記事)」のブースで展示されていた,ユビキタス・コンピューティングのシステム例。無線ICタグや赤外線など各種の通信機能を備えた携帯情報端末「ユビキタス・コミュニケータ(UC)」を使うもの。各所の無線ICタグにUCをかざすと,その場所でするべき作業指示を画面に表示する。ブース上部にある赤外線マーカーの近くに来ると,画面に現在位置を映し出す。
■T-Kernelをカーナビ開発に適用
デンソーが開発中のカー・ナビゲーション・システム。プロセサは,デンソーが開発した「NAVIEM」(動作周波数600MHz,90nmルールのSoC)である。
カー・ナビゲーション・システムの画面。イーソルの「eT-Kernel/Extended」と,システム開発スイート「eBinder」を利用した。メモリ保護機能と,プログラム実行の管理にUNIXライクなプロセス・モデルを導入することで,新たなソフトウエアの組み込みを容易にした。μITRONのソフトウエア資産も流用できたという。
■36万種の漢字フォント無償公開
「漢字文化に貢献したい」と熱っぽく語る坂村健 東京大学教授。2005年12月13日の記者発表会壇上にて(
IT Pro関連記事)。
漢字検索用のツールも披露した。
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