地上デジタル放送で提供されるハイビジョン番組の著作権保護の仕組みとして,「コピー・ワンス」の運用を改めて,いわゆる「出力保護」を採用するよう,JEITA(電子情報技術産業協会)が放送業界に対して提案していることが明らかになった。

 コピー・ワンスは,「録画した番組を,オリジナルを残したまま他のメディアに複製(ダビング)できない」というもの。放送波にはコピー・ワンスの制御信号を多重するとともに,スクランブルを施す。この信号に正しく反応する受信機を製造するメーカーのみにスクランブルを解くのに必要となるB-CASカードを配布する仕組みであり,2004年4月から地上デジタル放送とBSデジタル放送で導入された。

 この仕組みを導入した後,「バックアップがとれない」「ムーブに失敗するとコンテンツが消失してしまう」などといった不満の声が視聴者から出ていた。このため,総務省の情報通信政策部会「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」が2005年7月29日に出した第2次中間答申では,こうした不満の解消・低減がデジタル放送の受信機普及に向けた課題の一つと位置づけ,「メーカーや放送事業者などによる見直しの検討」を要請していた(答申は(こちら))。

 JEITAの提案はこうした動きを受けたもので,いわゆるEPNによる出力保護の運用を提唱する。EPNの基本的な考え方は,コピーに関する制約のないコンテンツに対しても,スクランブルをかけて出力することでコンテンツの著作権を保護しようという考え方。スクランブルをかけた映像はライセンスを受けた機器でのみ再生できる。この結果,デジタル放送で提供される番組は,いわゆる「コピー・フリー」ではないが,コピーの枚数制限や世代制限はなくなる。ただし,インターネットへ不正に再配信するといった行為に対しては歯止めをかけることができる。CPRMに対応する媒体にDVD-VR規格(いわゆるVRモード)で記録できるが,DVD-Video規格では記録できない。EPNについては既に地上デジタル放送の運用規定の中に記述されており,それを実際に運用しましょうという形の提案となる。実際,中間報告でも図表22で紹介されている。

 なお,BSデジタル放送受信機については,EPNの規定が定まる前に出荷されたものもある。こうした機種で受信した場合には完全にコピー・フリーになるため,今回の提案は地上デジタル放送に限定した形となる。