図◎松下電器産業製の石油温風暖房機の事故を伝える新聞記事
図◎松下電器産業製の石油温風暖房機の事故を伝える新聞記事
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 松下電器産業は2005年12月6日,同社製の石油温風暖房機で一酸化炭素中毒事故が相次いで発生している問題に関して,新たな対策を発表した。

 同社は11月29日,経済産業省から消費生活用製品安全法第82条に基づき,該当製品の回収,点検および改修,危険性の周知などの措置を取るよう,緊急命令を受けている。11月30日には,中村邦夫社長を本部長とする「FF緊急市場対策本部」を立ち上げて,対策を強化していた。ところが12月2日,点検・部品交換済みの機種で新たな事故が発生したことを受け,今回の緊急対策を取りまとめた。

 主な内容は

  1. 該当機種を引き取り(1台当たり5万円)もしくは無料点検修理をする。
  2. 修理済み製品の全保有者に対し,電話で「異常の有無の確認を行うとともに,使用中の換気と就寝中の使用停止のお願い」をする。さらに点検・修理済み製品の全数再点検を訪問によって行い,引き取り(1台当たり5万円)を提案する。
  3. 使用の継続を希望する場合は,不完全燃焼警報器を配布・設置する。

 加えて,未対策のユーザーへの告知活動を大々的に展開する。具体的には

  1. 全国62紙を対象に引き取りのお知らせを追加した新聞告知広告を実施。
  2. 12月10日から19日まで,すべてのテレビCMを中断し「お知らせとお願い」の告知広告に差し替える。
  3. 12月8日から12月末をめどに、同社社員をガソリンスタンドや灯油販売店(推定6万店)に配置・巡回させ、ユーザーの使用情報を早期に把握し,対策・処置を推進する。
  4. そのほか,同社製品にチラシを同梱したり,インターネットのWWWサイトにテキスト広告を掲載するなどして,ユーザーに告知する。

未対策品はどこに…

 今回の事故は,松下電器産業が1985年から1992年までの期間に製造した,FF式石油温風機で起きている。2005年1月5日に福島県で最初の事故が発生。さらに,2月23日と4月13日にも同様の事故が発生したことを受け,同社は4月20日に,安全確保のために社告を行い,部品交換などの無償修理に応じてきた。しかし,11月21日には未点検品で4件目の事故が発生し,経済産業省が緊急命令を発動していた。一連の事故でこれまで2人が死亡している。

 事故の原因について同社は,FF式石油温風機の燃焼室に給気する耐熱ゴム製2次エアホースに主因があると見ている。発売後14年以上が経過し,経年劣化によってホースに亀裂が入ることで,不完全燃焼が起きて一酸化炭素が亀裂より漏れ出す。さらに,給排気筒・製品の設置状況など複数の要因が重なると,一酸化炭素濃度の上昇や燃焼室内の圧力が増加し,室内に一酸化炭素が漏れた,と推定している。なお,12月2日に起きた事故については「原因を調査中だが,部品交換済みの2次エアホースが外れていることが確認された」(同社広報グループ)という。

 同社によると,今回点検の対象となっているのは,1985年から1992年までの期間に製造されたFF式石油温風機19機種に加えて,同等の構造を持つ石油フラットラジアントヒーター6機種。合計で15万2132台を販売済み。そのうち「既に5万8000台分については状況を把握済みで,現在も使用中の3万9000台は点検・修理済み」(同)としている。ただし,残りの10万台弱については「まだ連絡がつかない状態」(同)という。製品の発売から既に14年以上も経っており,同社でも顧客名簿などを保有していない。冬本番を迎える前に,新聞やテレビなどの告知を通じて,未対策のユーザーにどれだけアクセスできるかが,新たな事故を防止するカギになりそうだ。