図◎新社長に就任する須藤民彦氏(左)。現社長の伊藤周男氏は業績悪化の経営責任をとって相談役に退く(右)。
図◎新社長に就任する須藤民彦氏(左)。現社長の伊藤周男氏は業績悪化の経営責任をとって相談役に退く(右)。
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 パイオニアは2005年11月21日,社長交代の人事を発表した。現在同社副社長の須藤民彦氏が,2006年1月1日付で社長に就任する(図)。現社長の伊藤周男氏と現会長の松本冠也氏は,同日付で相談役となり,経営の一線から退く。2004年度下期からの業績の急激な悪化に対する経営責任をとる。

 伊藤氏は「現在の業績は当社始まって以来の厳しいもの。(変化の早い市場)環境に対応できなかったことに社長として責任を感じている。(社長を後退することで)責任を明確にしなければならない」と語った。

 新社長に昇格する須藤氏は,1994年から10年に渡って同社の収益の柱であるカーエレクトロニクス事業を担当してきた。海外経験も豊富で,現在同社の売り上げの6割が海外市場であることから「適任である」と伊藤氏は須藤氏を紹介した。

選択したPDPとDVD事業で赤字拡大


 1996年に社長に就任した伊藤氏は,1998年に「選択と集中」の経営手法に基づく構造改革「パイオニア ビジョン2005」を策定。レーザーディスク・カラオケや映像・音楽のソフト事業,携帯電話機事業などから撤退し,プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)とDVDレコーダー,カーナビゲーション/カーオーディオ(カーエレクトロニクス)事業の三つを戦略事業に選び,これらに経営リソースを集中して注いできた。

 当初,この施策は功を奏し,パイオニアの業績は2004年度上半期まで回復に向かった。ところが,同年度下半期になると状況は一変。競合メーカーの増加により製品の価格下落が進む中,同社はコスト削減が伴わず,PDP事業とDVDレコーダー事業の収益力が悪化。両事業の赤字は拡大し,2005年度中間期(4~9月)の連結決算は,163億円の営業赤字,122億円の最終赤字に転落した。

 パイオニアはデジタル家電の市場拡大を見込んだものの,自社の競争力に対する読みが甘かったといえる。それを如実に反映するのが,出荷台数の予想。PDPでは,2005年度の出荷台数の予想を80万台と見込んでいたが,2005年10月31日に64万台へと下方修正。同様に,DVDレコーダーでは120万台から105万台へと下方修正した。これに併せて,同日,パイオニアはPDP事業やDVDレコーダー事業を柱とするホームエレクトロニクス部門の2005年度通期の業績予想も下方修正した。売上高は3900億円から3510億円に下がり,営業損益は120億円の赤字から430億円の赤字に拡大する見込み。

 PDP事業でもDVDレコーダー事業でも,パイオニアは先行メーカーだった。ところが,技術で先駆けて市場を開拓しながら,後続メーカーに追いつかれ,追い越された。日本経済新聞社の調査では,日本市場における2004年のプラズマテレビ受像機の出荷台数シェアは,8.8%で4位。前年よりも5.8ポイントシェアを落とし,トップ3から脱落した。DVDレコーダーのシェアは前年よりも0.2ポイント高めた15.0%だが,こちらも前年のトップ3から4位に落ちている。