三菱レイヨンは,ポリカーボネート(PC)の透明性や耐熱性を維持しながら流動性を高められる改質剤について「第14回ポリマー材料フォーラム」(主催:高分子学会)のポスターセッションで発表した。PCは,透明性や耐熱性の高さなどから光学部品に幅広く使われるが,溶融流動性が低いという問題を抱えている。低分子量のPCオリゴマを添加することで流動性を高める方法もあるが,低分子量のものを混ぜるため,もろくなって耐熱性が低下するという欠点がある。同社が発表した改質剤は,こうした問題点を改善するものという。

 同社が今回発表した改質剤は,PCに非相容で溶融粘度が低いのが一つの特徴。射出成形の際に「せん断力によって溶融粘度の低い部分が伸ばされ,流動性が高まる」と同社は推定している。流動性に優れたタイプの改質剤Aと透明性に優れたタイプの改質剤Bの2種類があり,同社ではそれぞれのタイプの改質剤を2005年10月から販売を開始しているという。

 同社の評価では,同改質剤Aを粘度平均分子量1.5万のPCに5質量%添加した場合の,スパイラル流動長(射出圧力80MPa,幅1.6×厚さ2mmの条件)は410mm,同耐熱性(HDT)は136℃だった。改質剤を加えないPCのみの場合とPCオリゴマを10質量%添加した場合のスパイラル流動長/HDTはそれぞれ順に,350mm/136℃,420mm/133℃。これらの比較から,改質剤Aは耐熱性を維持しながら流動性を高められことが確認できたとしている。

 また,同改質剤Aを7.5質量%添加した場合は,スパイラル流動長/HDTは460mm/134℃。PCオリゴマを10質量%添加した場合よりも,耐熱性を低下させずに流動性を高められることが分かったとしている。

 ちなみに,全光線透過率は,同改質剤Aを7.5質量%添加したときが89%,それ以外の同改質剤Aを5質量%添加したとき,PCオリゴマを10質量%添加したときが90%。PCのみの場合の全光線透過率は90%であることから,同社はいずれのケースでも透明性は維持できているとしている。