三井化学は,ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)といったポリオレフィン(PO)と,ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような非POの樹脂を化学結合させる技術を開発した。臭素化POを原料に使い,極性モノマをラジカル重合することで,簡単に高純度のPOと非POのハイブリッド・ポリマを製造できるという。塗装性,接着性,親水性,エンプラなどの極性ポリマとの相容性など,POの弱点を改善したハイブリッド・ポリマの開発に利用できると期待される。同社は,この技術を2005年11月15~16日開催の「第14回ポリマー材料フォーラム」(主催:高分子学会)のポスターセッションで発表した。

 同社が臭素化PPを得るために用いた方法は,クロロベンゼンにPPを溶解させ,臭素化剤のN-ブロモコハク酸イミド(NBS)を加えて100℃で2時間加熱するというもの。NBSの量を変えたり,さらにラジカル開始剤のアゾビス・イソブチロ・ニトリル(AIBN)も加えるようにすることで,PPの1分子当たりに臭素を1~3個入れることができるという。同社は,こうして得られた臭素化PPに,極性モノマのメタクリル酸メチル(MMA)を加え,さらに触媒として臭素化銅(CuBr)/ペンタメチル・ジエチレン・トリアミン(PMDETA)を10~60質量%添加して加熱。MMAをラジカル重合させることにより,PPとPMMAのハイブリッド・ポリマを作った。

 同社の説明員によれば「MMAの量や加熱時間を調整することにより,ハイブリッド・ポリマにおけるPMMAの含有量を制御できる」。実際,同社ではPMMAが17.4/39.3/63.1質量%といったPMMAの含有量が異なるPPとPMMAのハイブリッド・ポリマを作っている。17.4/39.3質量%の場合は,PPのマトリクスに直径50nmほどのPMMAの島が分散した組織となり,63.1質量%の場合は,PPのマトリクスに直径300nmのPMMAの島が分散し,さらにそのPMMAの島の中にPPの島が分散した組織となったという。

 さらに同社は,こうして得た39.3質量%のPMMAを含有したハイブリッド・ポリマを,PPとPMMAの相容化剤として使い,PPとPMMAをブレンドした。その結果,同相容化剤を5質量%(PPとPMMAの合計を100質量%とした場合)加えたPPとPMMAのブレンド品は,相容化剤を加えないPPとPMMAのブレンド品に対して曲げや引っ張りの強度がそれぞれ71%,100%向上した。

 同社によれば,PE,エチレン-ブテン共重合体でも同様の方法で臭素化が可能。また,臭素化PPは,アクリル酸エチル,スチレン,スチレン/アクリロニトリル,N-イソプロピル・アクリル・アミドなどMMA以外のモノマの重合にも適用可能という。

 同社は上記のほかに,PPのパウダを溶かさずにスラリー状にして臭素化し,それをさらにスラリー状態でラジカル重合させる技術も開発したという。この技術を用いると,PMMAのシェルの中にPPのコアが存在するシェル/コア構造を作ることができる。このシェル/コア構造は親水性を示し,PPの板に塗り込むことでPPの表面に親水性を持たせることができるという。