[図]透明性を維持しながら耐熱性/耐衝撃性を向上したPLA。数値はPLA/PMMA/改質剤の質量%を示している。
[図]透明性を維持しながら耐熱性/耐衝撃性を向上したPLA。数値はPLA/PMMA/改質剤の質量%を示している。
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 三菱レイヨンは,ポリ乳酸(PLA)の透明性を生かしながら耐熱性/耐衝撃性を向上させる技術を開発した。PLAを,PLAと相容性の良いポリメタクリル酸メチル(PMMA)とアロイ化して耐熱性を向上。さらに,アクリル系のゴムから成るコア部分を,PLAと相容性の良い樹脂のシェルで包んだコア/シェル型の改質剤を,100質量%のPLA/PMMAアロイに最大25質量%添加し,耐衝撃性を向上させる。同社は,この技術を2005年11月15~16日開催の「第14回ポリマー材料フォーラム」(主催:高分子学会)のポスターセッションで発表した。

 PLA/PMMAアロイはPMMAが増えるとガラス転移温度Tgが上がり,耐熱性(荷重たわみ温度)が向上する。透明性については,PLAとPMMAの比率によらず良好という。こうしたアロイに上記の改質剤を加えることで耐衝撃性が向上するのは,ゴムの柔軟性による。改質剤の粒径は100~300μm。同社は「粒径をこれより大きくすると,同じ量の改質剤を入れても粒子同士の距離が長くなり,強度設計が難しくなる。逆に粒径をこれより小さくすると,改質剤のゴム部分のクレーズ(空げき)が小さくなり耐衝撃性が低下する」としている。

 改質剤を加えても透明性を維持できるのは,屈折率を制御しているため。「シェルの樹脂とコアのゴムのそれぞれで組成を調整し,改質剤とPLA/PMMAアロイの屈折率を近くしている」(同社)。その結果,PLA/PMMA/改質剤アロイ(質量%は40/60/25)では,シャルピー衝撃強度(JIS K7111-1eA)で18kJ/m2,荷重たわみ温度(JIS K7207-A)で65.6℃と,PLAの2.9kJ/m2,53℃から耐衝撃性や耐熱性を向上させながら,全光線透過率(JIS K7361-1)で91.3%と高い透明性を確保できたという。