公開した基地局装置。商用サービス時には,さらに小型化した装置を利用する予定
公開した基地局装置。商用サービス時には,さらに小型化した装置を利用する予定
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アンテナやビデオを格納したパソコンなどとともにブースに設置していた。背景に薄く写っているのが伝送したミュージック・ビデオのコンテンツ内容である
アンテナやビデオを格納したパソコンなどとともにブースに設置していた。背景に薄く写っているのが伝送したミュージック・ビデオのコンテンツ内容である
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 韓国SK Telecom社の関連会社であるSK Telesys社は,移動体用WiMAX(韓国での名称はWiBro)に向けた基地局装置を開発した。

 第3世代移動体通信システムとWiBroの両システムへの適用を狙い,通信プロトコル処理をソフトウエアで切り替える(いわゆるソフトウエア無線)システムを導入した。2005年11月14日から米カリフォルニア州Orange Countyで開催されているソフトウエア無線技術の国際学会「SDR 05(2005 Software Defined Radio Technical Conference and Product Exposition)」でシステムを動展示した(ホームページ)。

 韓国では2006年春からWiBroによる移動体向け高速インターネット・サービスが始まる予定で,既にSK Telecom社は釜山で伝送テストを開始しているという。SK Telesys社が今回見せたシステムは同テストで利用しているもので,「外部の展示会で公開するのは今回が初めて」(韓国SK Telesys社,R&D Center,CTOのJoo-Wan Kim氏)としている。米国でも現在,移動体への適用を目指したWiMAX技術に注目が集まっていることから,米国の通信事業者への納入を狙い,SDR 05でシステムを披露したもの。「WiMAXへの期待が高まるのは固定だけでなく移動体へのサービスが可能だから。移動体向けWiMAXのシステムは今後世界で利用される。米国のみならず,他地域でもニーズが高まると考えている」(CTOのKim氏)

 出展したシステムは,WiBroで利用する規格「IEEE802.16e」のドラフト仕様に準拠した送受信回路を持つ基地局装置で,2300MHz~2327MHzの帯域において,8.75MHzのチャネルを使ってデータを送受信する。2×2のMIMO技術を取り入れており,一次変調方式に64値QAMを用いた場合のセクター・スループットは最大48Mビット/秒(下り方向)に達する。SDR 05の会場ブースでは,基地局装置と端末側(モバイル・ターミナル側)を無線で接続し,ミュージック・ビデオの伝送を実演した。同社によれば「こうした動画伝送の用途の場合,基地局から半径1kmの範囲では,時速60kmで移動中のユーザーに対して高品質のサービスを提供できる」(韓国SK Telesys社 System Development Team 2,ManagerのHeon-Il Lee氏)という。なお釜山でのテストにおいては,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.が開発した端末を使っている(Tech-On!の関連記事)。

 ソフトウエア無線のシステムでは,米Texas Instruments,Inc.のDSPや米国メーカーのFPGAを多用してシステムを構成している。第3世代移動体通信システムとWiBroのシステムの切り替えは,ソフトウエアの変更と,後段のアナログ・フロントエンド用ボードを変更することで実現する。なおSK Telecom社は,移動体通信の基地局開発に向け,米TechnoConcepts社のRFフロントエンド回路を伝送実験に利用することを発表している(米TechnoConcepts社発表資料)。TechnoConcepts社は,広帯域で高速のΣΔA-D変換器を使い数十kHzから数十MHzのRF信号をダイレクトにデジタル信号に変換する技術を持つと主張している。SK Telesys社の技術者は「TechnoConcepts社の技術で,1枚のRFフロントエンドのボードで2種類のRF信号の送受信を実現することが可能になる」(韓国SK Telesys社 System Development Team 2,ManagerのHeon-Il Lee氏)と期待しているという。