代表執行役社長の船井哲良氏
 「最大の誤算は液晶パネルの調達にある」———。船井電機の決算説明会において,代表執行役社長の船井哲良氏は,第一声をこう切り出した。同社は15インチ型と20インチ型の液晶テレビを生産しており,パネルは現在,全量を台湾Chi Mei Optoelectronics Corp.から調達している。ところが,「大型機種の生産に乗り出すべく,資本提携も含めて調達規模を拡大しようとした矢先,調達先と国内メーカーで特許問題が持ち上がっていることがわかり,調達を控えざるをえなかった」(同氏)。Chi Mei社とシャープとの間で知的財産権上の問題が発生していることを知り,2005年2月に調達計画の修正を行ったという。

 薄型テレビは同社にとって,DVD機器,デジタル・カメラと並ぶ3本柱の主力事業。同社は年間売上高を6000億円へ拡大する目標を掲げているが,「液晶パネルの安定した調達ができなければ計画達成は不可能」(同氏)と危機感を募らせる。船井氏は,今後の経営課題の第一にパネル調達を挙げ,「2006年5月の通期決算発表までに複数メーカーと供給契約を結んだ状態にする」と言う。今後,26インチ型(あるいは27インチ型),32インチ型,37インチ型の大型機種の生産も計画している同社にとって,パネルの調達は生命線になりそうだ。

市場シェア1割への道

 ただし,液晶テレビ用パネルの需給はタイトで,新規参入メーカーも多い中,船井電機が複数の調達先を確保するのは容易ではないとの見方もある。パネル・メーカーが船井電機にパネルを供給するメリットについて,アナリストから質問が飛ぶと,船井氏は,「安価な製品をバラまいて引き上げる,不具合を起こして回収するようなことをされては,パネル・メーカーにも悪影響が出るはず。その点,当社は液晶モジュールを買って生産するのではなく,部品を仕入れて自社で開発,生産している。一定の販売チャネルもある。安定した生産,販売ができるテレビ・メーカーだ」と強気に答えた。台湾,韓国,中国から2社以上を調達先として確保したい考えだが,「たとえば韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.や韓国LG Electronics Inc.などとはCRTで既に供給関係にある。『一見さん』ではない」と自信をのぞかせた。資本参加も視野に入れて,パネルの安定した調達体制を築くとしている。液晶テレビ事業の今後の目標を船井氏は,「市場が5000万台規模になるとき,当社はシェア1割をとりたい」と語った。

中間決算は減益,DVDプレーヤの価格下落厳しく

 同社の中間決算(2005年4月~9月)は,売上高が対前年同期比0.4%増の1695億5300万円,営業利益は同13.0%減の152億7600万円となった(PDF形式の発表資料)。インドやロシアを中心に根強い需要のあるCRTテレビやOEM供給のデジタル・カメラなどが売り上げを伸ばした。液晶テレビの売り上げも,計画を下回ったものの,前年同期に比べれば大幅増となっている。一方でVTRやテレビデオなどは市場の縮小に伴って低迷,DVDプレーヤも台数は伸びたものの,価格下落のため減収となった。

 同社は2005年度通期(2005年4月~2006年3月)の業績予想を修正した。前回予想では4200億円としていた売上高を3873億円(対前年度比1.1%増)へ,377億円を見込んでいた経常利益は365億円(同0.3%減)へ,それぞれ修正した。VTR市場の縮小やDVDプレーヤの価格下落,米国でDVDレコーダや液晶テレビの普及が予測より遅れていることなどが原因としている。ただし,厚生年金基金の代行返上に伴って約30億円の増益があり,当期純利益は前回予想を上回る272億円(同5.7%増)を見込む。

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