開発鋼の硬さ(ロックウェル硬さ)と耐食性を示した図(左)と,塩水噴霧試験結果。
開発鋼の硬さ(ロックウェル硬さ)と耐食性を示した図(左)と,塩水噴霧試験結果。
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溶融炉の構造概略図(左)と,外観イメージ。
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 大同特殊鋼は,硬さと耐食性を高次元で両立させたステンレス鋼を開発した。ステンレス鋼としては最高レベルのロックウェル硬さ60HRCで,耐海水用鋼として最も広く使用されているSUS316級の耐食性を有する。耐食性を高めるために必要な窒素を,従来製法と比べて多く添加できる鋳造法を開発することで「世界最高」(同社)の耐食性を実現した。2005年秋に,自動車部品や半導体製造装置部品向けにサンプル出荷を始める。軸受や圧力・流量制御バルブなどに向く。2007年度に5億円の売り上げを目指す。

 高硬度ステンレス鋼の耐食性を高めるには,一般にクロムを添加することが多い。ただし,クロムによって焼き入れ・焼き戻し処理後の硬さが低減するため,添加可能な量に限界があった。クロムと同様,窒素にもステンレス鋼の耐食性を高める効果があるものの,添加時に窒素は気体の状態で存在するため,製法上の制約からやはり添加可能な量がステンレス鋼の0.1%程度と限られていた。

 窒素添加量の制約を超えるために,同社は新製法の「加圧誘導溶解鋳造法」を開発した。これは,耐圧容器内で16気圧ほどに加圧した窒素を強制的に溶融鋼に添加し,溶融鋼の凝固時も窒素の放出をできるだけ抑えるというもの。これにより,ステンレス鋼に窒素を約0.6%添加することが可能になった。同鋳造法の開発に関しては,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の基盤技術開発促進事業の助成も受けている。

 なお,同社は「NEDO成果展示会2005」(2005年11月15~18日,東京ビッグサイト)に,新開発のステンレス鋼を出展する予定。