カネカは,塩素系樹脂とアクリル系樹脂の特長を持つ塩素系アクリルグラフトポリマーを開発した。現在,製品名「プリクトマー」で商標登録を申請している。一般的な塩化ビニル樹脂(PVC)の製造プロセスを基に,アクリル分子鎖を完全にグラフト導入することで,PVCの一次構造を変性させることに成功。塩素を含有するアクリルグラフト共重合樹脂の開発は「業界初」(同社)という。

 PVCの持つ柔軟性を実現する手法としては,可塑剤を配合することが一般的だった。カネカが新たに確立した手法では,アクリル酸ブチルポリマーをグラフト導入することで(1)半硬質,軟質というPVCと同等の物性が得られる(2)ミクロ相分離構造を持ち,透明感のある成型品が得られる(3)従来のPVCに比べ,溶融流動性が高い上,耐熱性や耐候性に優れる---といったメリットがあるという。これにより,PVC特有の透明性,難燃性,成型性を損なうことなく,屋外使用に適した性質が得られるという。硬質から軟質までのシートフィルムといった広い分野での用途が見込める。

 従来,塩化ビニルモノマーとほかの樹脂の共重合に関しては,主に塩化ビニルモノマーと酢酸ビニル,ウレタン,エチレンなどのモノマー同士を重合させるラジカル重合が主流だった。しかしラジカル重合では,塩化ビニルモノマーと各コモノマーの反応性が異なるので,さまざまな重合体(ランダム共重合体,PVC,コモノマー単独重合体など)が混在した構成となり,完全なグラフトまたはブロック共重合樹脂を得られなかった。

 同社は,反応性アクリル酸エステル系ポリマーと塩化ビニルモノマーを共重合させる技術を新たに開発。塩化ビニル主鎖にアクリル酸エステル系ポリマーを完全にグラフト導入させることを可能にした。