住友金属工業は住友金属直江津と共同で,従来品よりも高い強度と優れた加工性を併せ持つステンレス鋼薄板「NAR-301 SS1」を開発した。電機製品のばね部品に向く。一般に,強度と加工性の両立は難しいとされているが,微細な結晶粒組織を安定的に生成する新製法によって実現した。既に一部顧客向けにサンプル出荷を始めており,順次サンプル出荷対象を拡大していくという。

 NAR-301 SS1は,16~18Cr-6~8Ni前後を主合金成分とするステンレス鋼。成分自体は従来の規格を満たしており,顧客側で材質変更する必要がない。パソコンや携帯電話機に使う皿ばねといった,繰り返し応力が発生するばね部品の材質としての用途を想定しており,従来品を超える疲労強度を確認しているという。

 加工性も優れている。従来品と比べて伸びが約15%上昇しており,延性が高い。一方で,同一硬度での曲げ加工部の表面粗さは約40%低減。残留応力や異方性も低いという。


硬度と伸びの関係
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曲げ加工部のSEM観察と表面粗さ
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