NTTが開発した各種のフォトニック結晶素子
NTTが開発した各種のフォトニック結晶素子
[画像のクリックで拡大表示]

 NTT物性科学基礎研究所は,Si系フォトニック結晶を用いて世界最高の光閉じ込め効果を持つ光共振器を開発した。閉じ込め効果の指標となるQ値は実測で98万,光導波路の影響を除いた補正値で104万と,初めて100万の大台に乗せた。「これまでのQ値の最高は90万程度だった」(NTT)という。Q値が高い光共振器は,光信号を制御して,光メモリや光スイッチなど各種の光論理回路を実現する上での基盤技術となる。

 NTTが開発したフォトニック結晶は,「2次元スラブ型」と呼ぶ平面状の基板に,空気の穴を規則正しく開けたもの。Si基板とその上のSiO2層,およびSOI層の3層からなる。穴半径は108nm,格子定数は420nmである。一部に「線欠陥」と呼ぶ穴のない部分を設けるとそれが共振器となって,特定の波長を選択的に閉じ込める効果を持つ。今回の共鳴波長は1581.85nm。共鳴する波長幅は1.6pmと非常に細い。光導波路の損失は2dB/cmと,従来のものより小さい。

 すでにNTTはこの共振器を基に,スイッチ切り替え時間が100psと超高速で,しかも1回の切り替え時の消費電力が100fJ以下と非常に小さい光スイッチ素子を開発済み。実運用時の消費電力は「10GHz動作を想定すると0.1mW~1mW程度」(NTT)。電子回路ではNAND,AND,NOT演算をそれぞれ6個組み合わせて構成する,信号の揺らぎ補正回路の光回路版の実現などが視野に入っているという。