11月1日付けでNECエレクトロニクスの代表取締役社長に就任する取締役執行役員常務の中島俊雄氏。1970年にNEC入社。LSI事業本部システムマイクロ事業部長,米NEC Electronics Inc.(現NEC Electronics America, Inc.)のPresident兼CEOなどを歴任。「業績回復に向け,社内リソースの活用を加速させる」。
11月1日付けでNECエレクトロニクスの代表取締役社長に就任する取締役執行役員常務の中島俊雄氏。1970年にNEC入社。LSI事業本部システムマイクロ事業部長,米NEC Electronics Inc.(現NEC Electronics America, Inc.)のPresident兼CEOなどを歴任。「業績回復に向け,社内リソースの活用を加速させる」。
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代表取締役社長を退き,取締役相談役に就任する戸坂馨氏。「業績回復のためには,経営トップ交代による求心力の強化が必要だと感じた」。
代表取締役社長を退き,取締役相談役に就任する戸坂馨氏。「業績回復のためには,経営トップ交代による求心力の強化が必要だと感じた」。
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売上高,利益率の改善と固定費削減に努め,2006年度の黒字回復を期する。
売上高,利益率の改善と固定費削減に努め,2006年度の黒字回復を期する。
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 NECエレクトロニクスは2005年度第2四半期(2005年7~9月)の決算報告で,2005年度通期での業績悪化の見通しを示した。不振の理由について同社は,「会社設立以来,社内リソースを活用するためのインフラ整備に注力してきたが,そのスピードが十分でなかった」(代表取締役社長の戸坂馨氏)との見解を示した。

下期も利益率低下と価格下落で赤字の見通し

 2005年7月時点から下方修正した同社の2005年度下期の業績見込みでは,売上高は対上期比90億円増の3220億円,営業損益は同89億円減の210億円の赤字となる見通しである。売上高は,LCDドライバの需要増が見込まれる「コンピュータおよび周辺機器向け」と「通信機器向け」,フラッシュ内蔵マイコンの需要増が見込まれる「多目的・多用途IC向け」での増加を見込む。営業損益が赤字となる要因については,限界利益率が対上期比で2ポイント下落する見込みであること,製品のさらなる価格下落が予想されることなどを挙げた。  

 2005年度上期での121億円の赤字とあわせて,通期の営業損益が330億円の赤字に転落する見通しとなった要因について,同社は市場環境の悪化よりも「社内の問題が大きかった」(戸坂氏)とする。具体的には,各製品のシステムLSI化の判断が遅れたことで設計効率が低下し受注の減少を招いたこと,設計資産の海外展開への注力が足りなかったことを挙げた。  

 同社は,期初に1000億円を計画していた年間設備投資を900億円に切り下げる。差額100億円の内訳は以下の通りである。(1)NEC山形の300mmラインの生産能力増強の2006年度上期への繰り延べ(300億円減額),(2)2005年9月に同社が購入した先端SoC基盤技術開発(ASPLA)の300mm試作ラインでの65nm~45nm世代プロセス開発(100億円増額),(3)フラッシュ内蔵マイコン向けテスターなど後工程の増強(100億円増額)。

「2006年度に黒字化しなければ将来はない」

 2005年度下期以降,同社は業績回復に向けて(1)売上高拡大,(2)限界利益率の改善,(3)固定費の削減に取り組む。このうち,売上高拡大については,中小ユーザーの取り込みに注力すると共に,北米や中国での販売体制を強化する。限界利益率の改善については,LCDドライバの製造プロセスの短縮や内製化を進めるほか,限界利益率が高いマイコンなどの販売拡大を狙う。  

 戸坂氏に代わり2005年11月1日に代表取締役社長に就任する中島俊雄氏は,同社の最優先課題を,“新規ユーザーの獲得のための販売チャネルの拡充と技術サポートのシステム化”に据える。「2006年度中に黒字化できなければわれわれに将来はない,という気概で業績回復に取り組む」(中島氏)。同氏は,2005年11月中に同社の復活に向けた詳細な経営方針を示す意向だ。