東レはこのほど,異なる2種類の樹脂を混合(アロイ)し,それぞれの樹脂の優れた特性だけを引き出すことができる技術「ナノアロイ技術(自己組織化ナノアロイ)」を開発した。この新技術は,2種類以上の樹脂を混合する際に,強いせん断力を付加すると同時に,ある添加剤を加えることによって,各樹脂の相構造を自己組織化させるもの。これにより「従来技術では実現不可能だった全く新しい先端樹脂材料の創出が可能になる」(同社)という。

 同技術を利用すると,従来の1/1000に当たる数nmというサイズで3次元的な連続構造を安定的に造り出せる。この3次元の連続構造こそ「樹脂の性能を飛躍的に高めるキーポイント」(同社)。例えば,PC(ポリカーボネート)とPBT(ポリブチレンテレフタレート)のアロイに適用した場合には,広範な組成でナノオーダーの特異的な連続構造を形成。さらに,その構造の結晶化を精密制御することにより,耐薬品性,耐衝撃性,耐熱性,耐湿熱性,透明性といった各種特性を飛躍的に高めることが可能になったようだ。同社では,こうした優れた特徴を生かし,自動車部品や電気・電子部品などの射出成形用途向けに展開,1年以内の発売を目指す。併せて,透明シートや装飾フィルムといった新規用途の開発も進めていくという。

 従来のポリマーアロイ技術は,ミクロンオーダーで分散構造を形成するものだった。このため,組み合わせる樹脂成分それぞれの特徴を十分に反映できず,特性改良にも展開領域にも限界があった。これに対し新しい技術は,適用できる樹脂が限定されないため「次世代のエンプラ開発の基本技術となる」と,同社では位置付けている。