図1 製品写真
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図2 フレキシブル基板の断面図
図2 フレキシブル基板の断面図
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図3 光の伝搬の様子
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図4 製造工程
図4 製造工程
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 松下電工は,光部品と電気部品を表面実装できるフレキシブル基板「光電フレキシブル配線板」を試作した(発表資料)(図1)。基板の中にはエポキシ樹脂製のマルチモードの光導波路を形成する(図2)。光導波路は高速のデータ通信で使い,低速のデータ通信や電力の送信に電気配線を用いる。今回の試作品では,1本当たりの伝送速度が2.5Gビット/秒の光導波路を8本使用し,20Gビット/秒の伝送ができるという。今後取り扱う情報量が多くなる次世代の携帯電話機やデジタルカメラ,携帯ゲーム機などに向ける。

 同社は2005年6月に開催された「JPCA Show2005」において,光部品と電気部品を表面実装可能なリジッド基板を発表していた。今回の試作品は,リジッド基板の代わりに同社のフレキシブル基板材料「FELIOS(フェリオス)」を用いている。また前回のリジッド基板のものに比べ,今回のフレキシブル基板では,光導波路の材料を同じエポキシ樹脂系の材料ながら,柔軟性を向上させた材料に変更したという。

 発光素子からの光は基板内にあるミラーによって反射して,光導波路を伝搬し,再びミラーによって反射して受光素子に伝搬する(図3)。それぞれのミラーの傾き角度は,光の入射角が45度になるようしてある。発光素子にはVCSEL,受光素子にはフォトダイオードを使用する。送受信に使用する光の波長は約850nmで,この波長の光に対する伝搬損失は,長さ5cmの光導波路と2枚のミラーでの反射で合計約2.4dBになるという。

既存の製造工程や装置を使える

 今回のフレキシブル基板の製造装置や製造工程は,既存のプリント配線基板の製造装置や製造工程をわずかに変更するだけでよいので,製造コストを低く抑えることが可能だという。製造工程は以下のようになる(図4)。まずフレキシブル基板にクラッドの材料,コア材料の順にラミネート加工で積層し,マスク露光をしてコアを作成する。次にコアを伝搬する光の入射角が45度となるように切り,反射膜を取り付け反射ミラーとする。再びクラッド材料,ポリミドのカバーレイをラミネート加工して付ける。それをひっくり返し,エッチングによりCu回路を形成する。さらにソルダー・レジストを積層し,レーザ加工によって電極を作成するといったような従来のプリント配線基板の製造工程とほぼ同様の工程を経るという。レーザ加工によって開けた穴に受発光素子のハンダ・ボイドを取り付ける。穴を開ける位置の精度は±数μm。一般のハンダ・ボイドの大きさは100μm~200μmなので,数%の誤差になるという。

 製造装置も既存のプリント配線基板用の製造装置を変更するだけでよい。例えばコアを斜めに切る装置では,ダイシングする従来の装置の刃を変更する。レーザ加工装置では,ミラーからの反射光を基準にして開ける穴の位置合わせができるようにするなどである。

 今回の試作品は,曲げ半径が4mm以上なら伝送損失の増加は全くないという。最小曲げ半径は1mmで,その場合曲げない場合に比べて損失が約1dB増える。ソルダー・レジストまで含めた基板の厚さは,約180μmで,光導波路の厚さは110μm。コアの大きさは80μm角である。具体的な製造コストや製造時間などは生産個数などで変わってくる。用途やスペックが決定すれば,半年~1年で量産体制は確保できるという。同社は2008年~2009年までに10億円の売上を目指すという。今回の試作品は2005年10月4日~10月8日まで開催される「CEATEC JAPAN2005」に出展する予定である。