日本エクスラン工業は,光触媒である酸化チタンをアクリル繊維に練り込むことで優れた自己浄化機能(図1)を持たせた繊維「セルフクリア」を開発,2006年春から販売を開始する。具体的には,四大悪臭やタバコ臭をはじめ,ベンゼン,トルエン,キシレンといった揮発性有機化合物に対する「消臭機能」,黄色ぶどう球菌に代表される菌に対する「抗菌防臭機能」,タバコのヤニなど有機物質の汚れに対する「防汚機能」を発揮する(図2)。2006年度に300t,2008年度には1000tの販売を目指す。

 セルフクリアのベースとなるアクリル繊維は,表面に直径数10nmのボイドを多数持ち,においや菌,汚れといった有機物質を効率良く物理吸着する。これを,繊維に練り込んだ酸化チタンが分解する。実は,この酸化チタンのサイズは,繊維に通常利用される酸化チタンに比べて約1/10と小さい。このため,より大きな表面積を確保し,より高い消臭・抗菌・防汚効果を発揮するのである。

 洗濯などによる機能低下もほとんどない。一般衣料をはじめ,スポーツ衣料,ユニフォーム,寝装品,カーペット,生活資材などに広く利用できる。

【図1】光触媒による消臭のモデル図。直径数10nmのボイドがにおいや菌,汚れといった有機物質を物理吸着し,これを繊維に練り込んだ酸化チタンが分解する
【図1】光触媒による消臭のモデル図。直径数10nmのボイドがにおいや菌,汚れといった有機物質を物理吸着し,これを繊維に練り込んだ酸化チタンが分解する
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【図2】タバコ汚れの自己浄化テスト。測定方法は,東洋紡本社ビル喫煙室で一カ月放置し,その後日光の当たる窓際で2週間後の回復状況を確認した
【図2】タバコ汚れの自己浄化テスト。測定方法は,東洋紡本社ビル喫煙室で一カ月放置し,その後日光の当たる窓際で2週間後の回復状況を確認した
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