台湾のDRAMメーカーが投資に積極的だ。Powerchip Semiconductor Corp.,Inotera Memories, Inc.,ProMOS Technologies, Inc.が300mmウエハー対応LSI生産ラインを拡張している(図)。2005年7月からDRAM価格が上昇したことで,さらに投資に前向きだ。

図●台湾のDRAMメーカーの300mmウエハー投入量の推移(2005年第2四半期までは実績,2005年第3四半期以降は予測)

 彼らの事業は,他社から生産を請け負うファウンドリーが基礎になっている。他社の開発したDRAMを生産して,委託されたDRAMメーカーへ出荷すると同時に自社ブランドとしても販売する。これならばDRAMを開発する力がなくてもDRAM事業ができる。生産を委託する側にすれば,投資負担を軽減できるメリットがある。台湾ファウンドリーの現状を整理しておくと,Powerchip社がエルピーダメモリに,Inotera社はドイツInfineon Technologies AG,ProMOS社は韓国Hynix Semiconductor Inc.へそれぞれ相手先ブランドでDRAMを供給している。

90nmの微細化で各社苦戦

 現在,DRAMメーカー大手は,90nmプロセスの微細加工の生産を立ち上げる時期にあるが,各社とも苦戦を強いられている。最も先行している韓国Samsung Electronics Co., Ltd.でさえ,計画通りには歩留まりが上がっていない。

 そもそもなぜDRAMメーカーが90nmプロセスへ微細化を進めるのかというと,それはウエハー1枚から取得するDRAMの数を増やし,1個当たりのコストを下げることに尽きる。したがって,微細化しても歩留まりが上がらなければ,取得するDRAMの数が増えず,微細化した意味がなくなってしまう。微細化はDRAMメーカーのコスト競争力の原点なのだ。

 前世代の110nmプロセスでもDRAMメーカー各社は苦杯をなめた。特にInfineon社はマ スクの問題などで歩留まり向上が遅れて,2004年後半のDRAM不足の原因の一つと なった。同社のDRAM部門が売却されるという話もささやかれるほどだ。今後、90nm や70nmでも歩留まり向上が他社より遅れるようだと,DRAM事業はコスト競争力で致命 傷を負うことになりかねない。

 Infineon社の微細化が進まなければ,同社のDRAMを受託生産しているInotera社の生産ラインでもコスト競争力が失われる。現在,投資している最先端の生産ラインの拡張が意味をなさなくなる可能性もある。