携帯電話機向けメモリに大きな変化が起きている。これまで搭載していたNOR型フラッシュEEPROMに代わってNAND型フラッシュEEPROMを搭載,同様に従来のSRAMや擬似SRAMに代わってDRAMを搭載しようとしている(図)。既に一部の機種では,NAND型とDRAMだけしか搭載していない。そして,この傾向は強まることはあれ,後戻りすることはない。

図●携帯電話機向けRAM生産量の推移(2004年までは実績,2005年以降は予測)

Samsung社vs日本連合

 今のところ,携帯電話機向けにNAND型フラッシュEEPROMを生産しているのは,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.と東芝である。携帯電話機向けにDRAMを生産しているのは,Samsung社とエルピーダメモリのみと言ってよい。特にDRAMは,今後もこの2社が中心になることは間違いない。

 NAND型とDRAMのMCP(Multi Chip Package)を生産する場合,Samsung社は1社でNAND型とDRAMが揃う。対抗上,残ったエルピーダメモリと東芝が手を組むのは自然の流れだ。実際,両社はMCP(Multi Chip Package)で協力して開発を進めている。すなわち,Samsung社vs日本連合という構図ができあがる。

 携帯電話機に搭載されるRAMは,かつてSRAMしかなく,そのトップ・メーカーはSamsung社だった。その後も擬似SRAMやNOR型フラッシュEEPROMなど携帯電話機向けにメモリを供給してきたSamsung社は,携帯電話機メーカーと深い関係を築いてきた。特にフィンランドNokia Corp.向けが強い。

 一方で,Samsung社は携帯電話機メーカーとして急速にシェアを拡大してきた。ここ数年で世界シェアは携帯電話機メーカー2位の米Motorola,Inc.に肉薄するとこまできた。競合する携帯電話機メーカーとしては,Samsung社からの部品調達を嫌がっても不思議ではない。場合によっては,開発情報が流れないとも限らないし,部品不足に陥った時,Samsung社本体より後回しにされてしまう恐れがあるからだ。携帯電話機向けメモリではSamsung社に差をつけられていたエルピーダ・東芝連合に追い風が吹いていると言える。幸か不幸か東芝の携帯電話機部門はSamsung社ほど目立っていない。エルピーダメモリは1.8V動作のDRAMで,東芝は多値技術を利用したNAND型フラッシュEEPROMで,それぞれSamsung社を一歩リードする。エルピーダ・東芝連合は,両社のチップを1つのパッケージにしたMCPで勝負に出る。