図1 NICTが開発したソフトウエア無線の「3.5号機」(右)を使う地上デジタル放送の受信デモンストレーション。3.5号機は,下からOS用マイクロプロセサのボード,ソフトウエア無線用のFPGAのボード,MPEG2など映像/音楽の復号用ボード,各無線システムのRF回路を搭載したボードからなる。
図1 NICTが開発したソフトウエア無線の「3.5号機」(右)を使う地上デジタル放送の受信デモンストレーション。3.5号機は,下からOS用マイクロプロセサのボード,ソフトウエア無線用のFPGAのボード,MPEG2など映像/音楽の復号用ボード,各無線システムのRF回路を搭載したボードからなる。
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図2 NICTが2004年7月に開発した「3号機」(右)。
図2 NICTが2004年7月に開発した「3号機」(右)。
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 情報通信研究機構(NICT)は地上デジタル放送(13セグメント),W-CDMA,IEEE802.11a/bという2バンドの無線LAN,のそれぞれのベースバンド処理およびMAC制御を1組のFPGAで実行するソフトウエア無線システムを開発した。現在開催中の展示会「ワイヤレスジャパン2005」で,W-CDMAと無線LANの切り替えや地デジ放送の受信デモを披露している。地上デジタル放送の周波数帯は400MHz帯,W-CDMAは2GHz帯,無線LANは2.4GHz帯と5GHz帯を利用する。NICTは,無線システムがこれだけ広帯域の周波数にまたがる場合でも,ソフトウエア無線として機能することが示せたとする。

 NICTが今回開発したのは,同機構が2004年7月に発表したW-CDMAとIEEE802.11aの2つの無線システムをソフトウエアの形で搭載したものに,IEEE802.11bと地上デジタル放送を加えたものである。SIP(session initiation protocol)ベースのVoIP(voice over IP)を利用したテレビ電話アプリケーションを利用中に,W-CDMAと11aを受信信号の信号強度やビット誤り率に応じて自動的に切り換えたり,地上デジタル放送を受信しながら11bの送受信を行ったりといったことができる。

 4種類の無線の信号処理には,600万ゲートのFPGAを4個利用する。「普段の通信は2個しか使わないが,異なるシステム間でのハンドオーバー時には残りの2個も利用する」(NICT ワイヤレスアクセスグループ グループリーダーの原田博司氏)。リアルタイムOSのμITRONを動作させるのは,クロック周波数が240MHz(430MIPS)のマイクロプロセサ2個である。地上デジタル放送の映像や音楽の復号化にはソフトウエア無線のボードとは別に,MPEG2とMPEG-AAC形式の5.1チャンネル用デコーダのボードを搭載した(図1)。4種類の無線対応とTCP/IP処理,およびSIP処理などのソフトウエアを保管するのに利用するメモリの容量は,128Mバイトと小さい。

 NICTはソフトウエア無線システムを1997年から研究しており,1号機にはPHSやGPSを搭載した。2001年9月に開発した2号機には,GPS,VICS,FM/AMラジオ,FM文字多重放送を搭載した。2004年7月に発表したものが3号機で,今回のシステムは「3.5号機」にあたるという(図2)。2号機で利用した各ソフトウエアも搭載した多機能のカーナビゲーション・システムや家庭のブロードバンド・ゲートウエイなどの用途を想定して開発したという。