金沢工業大学らは,知的財産に関するスキルの標準化を目指し,「『知財人材のスキルの明確化』に関する研究会」を発足した。知財戦略を進める上で必要な人材の確保や育成には,知財スキルの客観的な評価手法が必要と,政府機関の知的財産戦略本部が判断した。第1回の会合を,2005年8月に同大学大学院虎ノ門キャンパス(東京都港区)で開催する。

 研究会の発足に当たり,策定を目指す「知財スキル標準」のあるべき姿として,欧米で広く普及している「スキル標準(Skill Standard)を参考とした。スキル標準は,仕事の内容とその仕事に必要な技能を,職種・分野ごとに体系化・定義したもので,専門職種の実務能力を測る指標として,さまざまな業界で活用されている。例えば,米国で生まれたIT分野のスキル標準「ITスキル標準(ITSS)は,日本でも2002年に導入されている。ITSSでは,「プロジェクトマネジメント」や「ソフトウェアデベロプメント」など11の職種に関して,それぞれに必要なスキルの熟達度を7段階で定義している。こうした中でも,知財を扱う人材に関するスキル標準の策定は「世界に先駆けた日本独自の試み」(同研究会)という。

 研究会のテーマである「知財人材のスキルの明確化」でも,ITSSと同様に,知財分野の職種や分野ごとに,スキルと熟達度を定義する予定。例えば,メーカーに関連する知財分野の職種としては,特許調査を専門とする「サーチャー」,国内外の保護対象別(特許系・意匠系・商標系)「出願担当者」,外国出願時に明細書などを翻訳する「翻訳者」,人事・教育企画・報償金管理などに携わる「企画・管理担当者」,ほかにも「契約担当者」や「係争担当者」などを想定している。こうした既存の職種を基に,スキルの客観的指標を定義することで,企業が効率良く人材を確保・育成できる環境を整える。また,個人のキャリア形成の目安となる指標にすることも目指す。

 同研究会には,味の素,キヤノン,ジャパン・デジタル・コンテンツ信託,東芝,松下電器産業といった企業および金沢工業大学,東京大学,東北大学といった大学が研究員を派遣。事務局は,金沢工業大学の知的財産科学研究所が務める。研究会の発起人は,同大学工学研究科知的創造システム専攻教授で,同研究所所長の杉光一成氏。今後約1年は,企業における知財人材のスキルを正確に把握し,それを明確化するための「知財スキル標準」を検討する。将来は,性質の異なる「メーカー系」と「コンテンツ系」を分け,それぞれ独自に分科会を開催することも予定する。(高野 敦)

連絡先: 「知財人材のスキルの明確化」に関する研究会事務局(金沢工業大学知的財産科学研究所内)
電話: 03-5777-0807
URL:http://www.kanazawa-it.ac.jp/