【DAC 2005】比例縮小が限界にきた時代の設計手法を,米IBMが基調講演で論じる
米国カリフォルニア州アナハイムで開催中の「42nd Design Automation Conference(DAC2005)」の基調講演で,米IBM Corp. のBernard S. Meyerson氏(Fellow, Vice President and Chief Technologist, Systems and Technology Group)は,「比例縮小が限界にきた時代」における「設計のあるべき姿」を論じた。講演タイトルは,「古典的な比例縮小則が終焉した現在,”技術”をどう定義すべきか?」である。同氏は米国の業界紙が選んだ「半導体の技術開発に影響を与えた13人」のうちの一人という,著名人である。同氏は半導体の比例縮小がなぜ限界に来たのかを解説し,この不連続性を解決する手段として「Holistic Design(全体論的設計)」を提唱した。
同氏は,「IT産業は過去40年間,半導体の比例縮小則の恩恵により発展してきた。特にマイクロプロセサはMooreの法則に従う比例縮小により,性能が向上してきた。しかし現在,その比例縮小は終わった」と述べて,講演を始めた。
1965年に発表されたMooreの法則に従い,集積回路は12〜18カ月ごとに集積度が2倍になっていった。特にマイクロプロセサは微細化により,高速化,低価格化,低消費電力化,多機能化が達成されてきたことを同氏は図示した。なお,「Moore氏は集積密度が2倍になることを予測しただけで,古典的な比例縮小則は1974年にDennard氏が提唱した」と注釈を同氏は加えている。
アイロンより熱いPentium4
古典的な比例縮小則が限界となった理由は,消費電力にあるとした。ゲート酸化膜が比例的に縮小されなくなり,電源電圧が比例縮小から外れてきたからである。最先端のデバイスでは,ゲート酸化膜は1.2nm程度になり,原子層換算でわずか5〜6層にしか過ぎない。この結果,たった1個の原子の欠陥によりリーク電流が100倍になると説明した。そして図を使いながら,過去にはバイポーラ・トランジスタの性能が消費電力により限界となり,CMOSの時代になったことを見せた。そして,現在,CMOSでも消費電力が増大し,例えば,Pentium4の電力密度はアイロンのそれ(5W/cm2)を超えて,CMOSが限界に近づいていることを示した。その上で,2005年が半導体分野の技術が不連続に変化する年であり,これまでの比例縮小時代から革新技術(Innovation)の時代になり,システムの性能向上に焦点が絞られると述べた。
次に,同氏は,比例縮小の限界を超える技術革新の例として,ひずみSiトランジスタを紹介した。IBMでは90nm世代から,バリア膜(窒化膜)による,引っ張り応力印加により,nMOSの電子移動度を向上させる技術を実用化している。次の世代ではpMOSに圧縮応力を印加して,正孔移動度を向上させる技術を導入すると述べた。同氏はひずみの印加により,トランジスタ性能が20〜30%向上することを図で説明した。トランジスタは今後も,超薄膜SOI→高誘電率ゲート酸化膜→ダブル・ゲート→FinFET(2020年6nm)により発展すると述べた。
続いて配線技術のロード・マップを見せながら,低誘電率層間膜(2004年Keff=3.0)→超低誘電率層間膜→Porogens→エア・ギャップ(2020年Keff<1.3)と技術革新が進むと予想した。一般的には,65nm世代は製造が困難になると予想されているが,Meyerson氏は「自信をもって信頼性の高い製品を製造できる」と断言した。
技術革新にはカネがかかる
講演の後半はコストの問題を論じた。技術革新には莫大な費用がかかることが,課題である。技術革新を導入すると設備投資が劇的に増大する。この費用増大化は産業構造をも変えようとしていると述べた。コスト負担を軽減するためにダイナミックな企業提携が進み,基礎研究は産業界や政府機関による集中化が図られ,pre-competitive領域での協調が進んでいるとした。競争の時代から協調の時代へ,さらには協調+競争(Coopetition)の時代になるという。IBMは東芝やソニー,韓国Samsung Electronics Co. Ltd.などと共同開発を積極的に進めており,またAlbanyナノテク・センター(IBMやオランダASML,米AMD Inc.,独Infineon Technologies AGなどが参加)で193nm液浸露光技術の開発を促進していることを,具体例とした。
設計技術に関しては,新しいパラダイムとして「Holistic Design(全体論的設計)」を提唱した。すなわち,材料,デバイス,回路,コア,チップ,アーキテクチャ,システム評価,ソフトウェアを同時に最適化することが重要であると強調した。システム設計戦略として仮想的資源をマッピングして物理資源とする方式を紹介した。
最後にプロセサの革新技術についてIBMの製品を例に紹介した。MCM(multi chip module:1980年代)からPOWER5(CMOSマイクロプロセサ:1990〜2000年)へと進化し,さらにBlue Gene/L(マルチコア・プロセサ:2004年)へと発展を遂げたのは「Holistic Design」の成果であると強調した。同氏はBlue Gene/Lの演算性能は70.72TFLOPSで日本の地球シミュレータ(42.7TFLOPS)に打ち勝ったと誇らしげに語った。また「Cell」プロジェクトも紹介し,グローバル・パートナーシップの成果であると述べた。














