UWBと他の無線システムとの共用を審議するITU-Rの作業部会「TG1/8」は,2005年5月末に米カリフォルニア州サンディエゴで開催した第5回会合において,UWBの電波出力許容値に関する勧告草案をとりまとめた。UWBの電波出力の許容値に関しては,米FCCが既に許容値を定めている。今回作業部会がまとめた勧告草案では,FCCの許容値に対して厳しい内容が盛り込まれた。TG1/8の正式な勧告案は2005年10月の第6回会合(最終会合)でまとまる予定だが,この勧告草案のまま進んだ場合,UWBを利用した無線通信機器の開発に影響を与える可能性が出てきた。
 
 米FCCが定める放射強度の許容値では,例えば屋内の家電機器では,3.1GHz~10.6GHzで−41.3dBm/MHz以下となっている。これは,パソコンや家電機器の放射雑音の規制値「Part 15.209」を基にしたものである。これに対してTG1/8の勧告草案では,例えば気象レーダが利用する5.6GHz~5.65GHzでは,−65dBm/MHz以下を求めている。また無線LANサービスが利用する5.15GHz~5.35GHzでは,−66dBm/MHz以下となる。このほか,電波天文業務(RAS)の例では3.26GHz~3.267GHzが−82.9dBm/MHz(FCCでは−41.3dBm/MHz),4.8GHz~4.99GHzが−93.4dBm(FCCでは−41.3dBm/MHz)といった値が示されている。次世代の移動体通信システム「systems beyond IMT-2000」で利用する周波数に関しては,例えば1.885GHz~2.025GHzで−85.9dBm/MHzと,FCCの値である−61.3dBm/MHzを大きく下回っているという。

 UWBの伝送方式の一つであるマルチバンドOFDMでは,複数の通信業務と周波数を共用することを想定し,利用する周波数バンドを細かく選択できる。ただし,共用する無線業務の周波数内での許容値があまりに低いと,その周辺の周波数も含めて利用できる周波数帯域が限定されてしまう可能性もある。

 ITUの勧告案がそのまま,各国の周波数規制に当てはまるわけではないが,基準の策定時における重要な指標となる。今後国内でのUWBの出力基準の議論にも影響を与えそうだ。