名古屋工業大学 大学院 都市循環システム工学専攻 種村・種村研究室の家田 芳誠氏(写真)は,仙台で開かれたナノ学会 第3回大会において,「基板垂直方向に配向したZnOナノワイヤーのSi基板上への作製と構造評価」と題してポスター発表を行った。

 ZnO(酸化亜鉛)ナノワイヤーは,紫外領域の光を発するレーザー素子として有用なナノ構造体として知られている。しかし,Zn(亜鉛)は基板材のSi(シリコン)と共晶点を持たないため,従来はAu(金)原子をSi基板上に分散担持し,VLS(Vapor-Liquid-Solid)メカニズムによってZnOナノワイヤーを成長させる方法が取られてきた。

 今回,家田氏らは,Znと共晶点を持つGe(ゲルマニウム)薄膜をSi基板上に形成し,気相輸送法によってSi基板上に垂直方向に配向するZnOナノワイヤーの作製に成功した。作製方法はシンプルであり,まず石英管内部にZnOパウダーとC(炭素)パウダーを封入し,電気炉で1100℃まで加熱する。ZnOはCパウダーによって還元され,Zn粒子となる。Zn粒子の蒸気は温度の低い基板上へ移動し,堆積する。堆積したZn粒子は100ml/minで導入しているO2(酸素)ガスによって酸化され,ZnOナノワイヤーを形成する。

 作製されたZnOナノワイヤーは,先端部の直径30nm,根元が200nm,長さ3μmであり,配向密度は6×1012本/m2。またSAED(制限視野電子線回折)およびHRTEM(高分解能電子顕微鏡)による解析により作製されたZnOナノワイヤーは単結晶で,成長方向は[001]方向(c軸方向)と同定されたという。

 家田氏によると,今のところPL(フォトルミネッセンス)スペクトル測定にって満足できる光学特性は得られておらず,その原因はZnOナノワイヤーの酸素欠損や結晶欠陥にあると予想している。「今後はこうした欠陥を取り除き,レーザー素子としての発光効率の上昇を狙いたい」と同氏は述べた。(柏倉 俊介)

【写真】ポスターの前で研究成果について発表する名古屋工業大学 大学院 都市循環システム工学専攻 種村・種村研究室の家田 芳誠氏
【写真】ポスターの前で研究成果について発表する名古屋工業大学 大学院 都市循環システム工学専攻 種村・種村研究室の家田 芳誠氏