会見する中村氏
会見する中村氏
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 松下電器産業は,2004年度(2004年4月1日~2005年3月31日)の連結決算を発表した。売上高は8兆7136億円(前年度は7兆4797億円),営業利益は3085億円(同1955億円)を計上。前年度と比べ,それぞれ16%,58%と急増した。

 ただし,実態としては少し割り引いて考えなければならない。松下電工とパナホームの2社が持分法適用会社から連結子会社へ変更になったからである。これに伴い,売上高と営業損益が上振れしている。なお,2004年度の連結業績のうち,松下電工とパナホームによる売上高は1兆5561億円,営業利益は639億円である。これを単純に差し引くと,売上高は7兆1575億円,営業利益は2446億円。売上高は対前年度比4%減,営業利益は同25%増という計算になり,実質的には減収・増益といえる(発表資料)。主な減収要因は携帯電話機やPCの需要頭打ちと,それに伴う半導体の伸び悩み,連結対象である日本ビクターの業績不振という。

AV部門は微減,PDPテレビが唯一気を吐く

 主にAV機器,パソコン,携帯電話機といったデジタル家電機器を扱うAVCネットワーク部門(セグメント間消去前実績,以下同)は,売上高が3兆5588億円(前年度3兆8403億円),営業利益が1274億円(同1291億円)でわずかながら減収・減益。商品別の外部売上高では,PDPテレビが同71%増と大幅に伸びた(Tech-On! 関連記事)。液晶やブラウン管などPDP以外のテレビも同2%の増収だった。デジタル・カメラも利益に貢献した。これ以外の主力商品は,音響機器(同20%減),携帯電話機(同8%減),VTR(同8%減),情報機器(同4%減),DVDプレーヤ/レコーダ(同1%減)など,いずれも前年度割れとなった。なお,プラズマテレビは2005年度に世界シェア30%,デジタルカメラは2006年度に同10%を目指すという。

 白物家電や照明器具などの「アプライアンス」部門の売上高は1兆3328億円(同9%増),営業利益は776億円(同47%増)と増収増益だった。エアコンが同9%増,冷蔵庫が同1%増となるなど好調だった。

 電子部品やモータ,半導体を扱うデバイス部門は,売上高が1兆4690億円(前年度1兆6597億円),営業利益が578億円(同501億円)で,減収・増益だ。モータが増益に貢献したが,半導体や電池は利益を落とした。「半導体の不調は携帯電話機やパソコンの伸び悩みが大きい。当初,こうした製品の需要が回復するのは(2005年)4~6月と想定していたが,(同年)7~9月にずれ込みそうだ。この頃には半導体の業績も上がってくるだろう」(同社社長の中村邦夫氏)。

 構造改革の柱として続けてきたITへの投資は「順調に回収が進んでいる」(同社専務の川上徹也氏)という。2001~2003年度の中期経営計画「創生21」では1153億円を投資し,2003年度末の時点で863億円の成果を得ていた。現時点では「きちんと計算していないが,成果は間違いなく上積みしている」(同氏)。2004~2006年度の中期経営計画「躍進21」ではさらに1200億円の投資を予定。2004年度末時点で約1/3を既に消化した。「2005年度はVMI(Vender Managed Inventory)を本格的に導入し,仕入れ先と一緒に在庫管理・物流に取り組む」(同氏)。

 なお,2005年度の業績は売上高8兆7200億円,営業利益3300億円,純利益1100億円を見込む。特筆すべきは純利益で2004年度(585億円)と比べて88%増を見込んでいること。「大きな構造改革はほとんど終わった。これからの目標は業績の立て直しではなく株主への還元となる」(同社の中村氏)。

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