図1 「対向貼り合わせ方式」で製造する
図1 「対向貼り合わせ方式」で製造する
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 日本ビクターが,書き換え型DVD媒体の記録層を片面2層としたDVD-RWディスク技術を実用化すると表明した(ニュース・リリース
。媒体1枚当たりの容量は合計8.5Gバイトとなる。今まで片面2層の書き換え型DVDに関する学会発表はあったが「事業化に至るまでに完成度を高めたのはこれが初めて」(日本ビクター 広報室)という(Tech-On!関連記事)。同社は,DVD Forumに片面2層DVD-RWの規格を提案する。ただし,実用化時期は明らかにしていない。

 再生専用媒体や追記型媒体では2層技術が既に実用化しており,今回書き換え型が加わることで,DVDのすべての規格が2層に対応する技術的メドが立ったことになる。現時点で記録速度を2倍速まで高めた媒体を試作済み。「さらなる高速化も可能」(日本ビクター 広報部)という。

レーザ・パルスの数を増やして記録マークを正確に描く

 記録媒体を2層化するには,2層ある記録層のうち光ヘッド側に位置する「L1層」の光透過率を高める必要がある。光透過率が低いと,光ヘッドから見てL1層の先にある「L0層」を記録再生する際に,十分な強度のレーザ光を確保できなくなってしまうからだ。従って透過率を上げるため,L1層の膜厚は片面1層の場合と比べ薄くせざるを得ない。ただし,膜厚が薄すぎると,今度はL1層自体の記録レーザ光の吸収量が減ってしまうため,記録マークを正確に書くことが難しくなる。このトレードオフが,書き込み型の2層化を阻む壁となっていた。

 日本ビクターは,主に2つの工夫でこの困難を克服した。1つは,記録層材料をより高感度のものに変えたこと。材料の組成は明らかにしていないが,従来の片面1層DVD-RW媒体の書き込み速度を高める技術を応用したという。もう1つは,記録マークを消去・再書き込みする際に発生する「マークの消し残り」を減らせるレーザ制御技術「N-ストラテジ」を開発したことだ。技術の詳細は不明だが,従来の技術と比べた最も大きな違いはレーザ・パルスの数にあるという。レーザ光で記録マークを書き込む際には,記録マークの形状を整えるために,パルス状のレーザ光を複数回打ち込む「マルチパルス方式」を採ることが多い。今までのDVD-RWでは,長さがN(N=3~14,長さの単位はT)の記録マークを書く際にN-1個のレーザ・パルスを照射していた(ちなみにDVD-Rの場合はN-2個)。今回の技術では,レーザ・パルスの回数をN個に増やしたという。

 実用化当初の記録媒体の製造コストは,片面1層DVD-RW媒体の2倍ほどになるという。製造法には,2枚のポリカーボネート基板に1層目と2層目をそれぞれ成膜した後,接着剤で張り合わせる「対向貼り合わせ方式」を採用する。日本ビクターによれば「現行の1層DVD-RWの製造設備をほぼそのまま利用して製造できる」という。実際には,従来の設備に加えてプラズマ成膜装置を1つ余分に加えるか,または1つのプラズマ成膜装置で1層目と2層目の記録層を順に成膜するようにラインを組み替えるとみられる。