中国の信息産業部 電信研究院とフライは,東京都内で記者会見を開き,中国の携帯電話市場において第3世代(3G)の比率が2005年以降,急上昇し,2009年には半数を超えるとの見方を示した。加入数と端末の生産台数において世界一となっている中国市場における3G化の進展は,3G対応の端末やデバイスの需要を拡大することになる。

 中国では,これまで3Gサービスの開始が先送りにされてきた経緯があった。今回,携帯電話行政に大きな影響を与える信息産業部の電信研究院が,こうした見方を示したことは,3Gサービスが2005年中に確実に始まり,その普及に向けた施策を取っていく可能性が高いと言える。特に中国が中心になって開発した規格「TD-SCDMA」の開発企業に対しては,研究・開発などに政府が補助金を与える方針であり,こうした優遇措置が3G化のインセンティブになりそうである。既存のGSMやCDMAといった2G向け,あるいは3Gでも日欧の開発したW-CDMA,北米のcdma2000の開発に対しては,このような優遇措置はない。

 今回の会見で同研究院のChen Yuping(陳育平)氏は,携帯電話加入数の見通しのグラフを示しながら,加入数が現在の3億強から2009年には5億強になるとした。このうち,2009年における加入数の半分以上が3Gサービスのユーザーになるという。同氏によると,2006~2007年は携帯電話加入数の成長期にあたるが,2008~2009年には飽和期に入る。北京五輪を終える頃に,ちょうど携帯電話の成長にストップがかかる恐れがあるというのである。ただし,飽和時期が先延ばしになる可能性もある。それは,端末の低コスト化によってユーザー層が広がる場合である。現在のユーザーはほとんどが沿岸の都市部に住む富裕層であるが,端末の低価格化が進めば内陸の農村部にも普及する。

 この点について,会見に同席したフライの山口増海氏(代表取締役会長)は,携帯電話機の普及率の伸びは,多くの国においてそのGDPの伸びにリンクしているとする。これまで韓国やシンガポールがそうだった。中国の携帯電話市場が北京五輪後にも成長を続けるためには,2008年以降も高い経済成長を続けることが条件になる。

 このほか,中国の携帯電話市場の変化について,事業者のブランドが現在より強くなる可能性を示した。現在はメーカー・ブランドの端末が強いが,ここへ来て事業者ブランドの端末が登場し始めている。事業者ブランドが強くなると,中国市場で出遅れた携帯電話機メーカーにとっては,事業者への納入が市場シェアの拡大に結びつく。ただし,中国市場における事業者ブランドの比率は,せいぜい「1/10~1/7にとどまる」(Yuping氏)ため,日本のような事業者主体の市場にはならない。