図1 今回作製したSOA-AWGの光素子。寸法は3.5mm角である。
図1 今回作製したSOA-AWGの光素子。寸法は3.5mm角である。
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図2 作製手順その1
図2 作製手順その1
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図3 作製手順その2
図3 作製手順その2
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 東京大学工学系研究科と東京大学先端科学技術研究センターの研究グループは共同で,2種類の光素子を簡易なプロセスで1チップに集積する技術を開発し,実際に素子の試作を行った。現在開催中の電子情報通信学会(信学会)総合大会(大阪大学,2005年3月21日~24日)で成果を公表したもの。将来の光集積回路の実現を目指した研究開発の成果の1つであるという。

 今回開発した光集積素子は,AWG(arrayed waveguide grating)型の8チャネル光分波器と,半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier:SOA)のゲート・アレイから成る。同素子に8波長多重の光信号を入力すると,所望の波長の光だけを選択し,増幅した後で出力するチャネル・ゲーティング動作をする。

 チップ・サイズは3.5mm角で,一般的なAWGの1/100(面積比)と極めて小さい。利用可能な光の中心波長は,光通信で一般に利用する1.55μm。波長間隔は400GHzで,CWDMなど向けである。波長の消光比(オン時/オフ時の出力比)は40dB以上と大きい。

1度の結晶成長で異なる構造を形成

 同素子はn型InP基板上に集積した。SOAの形成にはMOVPE(有機金属気相成長法)を利用した。MOVPEは,素子の小型化やコストの点で優れているという。特に「MOVPEではマスク幅を調節することで(バンドギャップなどで異なる特性を持つSOAの多重量子井戸を)1度の結晶成長で作製できる」(東京大学)という。従来は,特性の異なる量子井戸ごとにエッチングや結晶成長を繰り返す複雑な手順が必要だった。

 具体的には,(1)同基板上にSiO2でマスクとなるパターンを形成,(2)MOVPE法による結晶成長でInGaAsP/InPの多重量子井戸コアを形成,(3)SiO2マスクを除去,(4)導波路用に再度SiO2パターニング,(5)Cl2/Arドライ・エッチングで導波路を形成,(6)SOAを制御する電極を形成,といった手順で同素子を作製した(図2,図3)。