図1 ベルト着用サインが消えたのち,おもむろに無線LANを搭載したノート・パソコンを開くと,Windows XPのワイヤレス・ネットワークに「connexion1」の文字が現れた。早速ワイヤレス・ネットワークに接続。
図1 ベルト着用サインが消えたのち,おもむろに無線LANを搭載したノート・パソコンを開くと,Windows XPのワイヤレス・ネットワークに「connexion1」の文字が現れた。早速ワイヤレス・ネットワークに接続。
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図2 WWWブラウザを立ち上げると,まずSASのネット・アクセスのホーム・ページが表示される。「Internet」のボタンを押して次に進む。
図2 WWWブラウザを立ち上げると,まずSASのネット・アクセスのホーム・ページが表示される。「Internet」のボタンを押して次に進む。
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図3 機内インターネットの案内画面が現れた。接続料金などを確認してユーザー登録の画面へ。
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図4 ユーザー登録では住所,氏名,電子メール・アドレスなどを尋ねられた。その後,加入者契約とプライバシ・ポリシに合意し,ユーザー名とパスワードを入力すると登録は完了だ。
図4 ユーザー登録では住所,氏名,電子メール・アドレスなどを尋ねられた。その後,加入者契約とプライバシ・ポリシに合意し,ユーザー名とパスワードを入力すると登録は完了だ。
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図5 機内インターネットの案内ページへ戻り,ユーザー名やパスワードを入力して実際の接続手順に入る。まず,定額制か従量制かを選び,次にクレジット・カード情報や請求書送付先を入力すると接続は完了する。
図5 機内インターネットの案内ページへ戻り,ユーザー名やパスワードを入力して実際の接続手順に入る。まず,定額制か従量制かを選び,次にクレジット・カード情報や請求書送付先を入力すると接続は完了する。
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図6 記者のノート・パソコンと機内にあるアクセス・ポイントとの接続速度は54Mビット/秒。IEEE802.11gでつながっているようだ。
図6 記者のノート・パソコンと機内にあるアクセス・ポイントとの接続速度は54Mビット/秒。IEEE802.11gでつながっているようだ。
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図7 上空1万58mから「Tech-On!」にアクセスするとホーム・ページが難なく表示された。
図7 上空1万58mから「Tech-On!」にアクセスするとホーム・ページが難なく表示された。
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 2005年3月10日~16日にドイツ・ハノーバーで開催された「CeBIT 2005」に参加するために,記者は今回Scandinavian Airlines(SAS,スカンジナビア航空)を利用した。東京・成田からデンマークの首都コペンハーゲンを経由してハノーバーへ。その機内でふと目にとまったのが機内での無線LANによるインターネット接続サービス(以降,機内インターネット)の案内だ。SASでは,2005年2月7日から長距離路線に機内インターネットを順次導入,同年3月までに同路線での導入を完了したという。

8つの衛星で太平洋を除く北半球をカバー

 このシステムを提供するのは,米The Boeing Co.(ボーイング社)の事業部門である「Connexion by Boeing」である。サービス名として利用されることも多い。実はConnexion by BoeingはCeBITに出展しており,インターネット接続の現状を聞くことができた。

 Connexion by Boeing のサービスは,SASの他にもLufthansa(ルフトハンザ航空)の長距離路線やANA(全日本空輸)の上海線,JAL(日本航空)やSingapore Airlines(シンガポール航空)のロンドン線で導入済み(Tech-On!関連記事)。同社によれば2005年5月にはKorean Airlines(大韓航空),同年6月にはChina Airlines(中華航空),同年8月にはAsiana(アシアナ航空)でサービスが始まるという。

 航空機内には複数の無線LANの基地局が設置されており,無線LAN対応のノート・パソコンなどからインターネットに接続できる。航空機はフェイズド・アレイ・アンテナ(複数のアンテナ素子を使い,電気的に指向性を変えられるアンテナ)を使って赤道上空の静止衛星を捉える(Tech-On!関連記事)。この静止衛星と地上局を経由して介してインターネットと接続する。当初,静止衛星は3台,地上局は2局程度でカバーできる範囲も北米−欧州に限られていたが,現在は静止衛星を8台,地上局を5局使うことで,北米−欧州−アジアと太平洋を除く北半球をカバーできるようになった。太平洋を横断する路線でのサービスについても,JALやANAが米国路線へのサービス拡張を予告しており,開始は時間の問題だろう。

平均データ伝送速度は150k~200kビット/秒

 現在のところ地上局から静止衛星における上りのデータ伝送速度は5Mビット/秒,静止衛星から地上局の下りは1Mビット/秒である。静止衛星でカバーする同一領域を飛行する航空機および,同一機内のユーザーで帯域を分け合うため,1人当たりのデータ伝送速度は平均で150kビット/秒~200kビット/秒になるという。「VoIP(voice over IP)による通話サービスにも十分に使える」(Connexion by Boeingの説明員)。利用路線,利用客の増加に合わせて例えば前述の上りの帯域を10Mビット/秒,15Mビット/秒と増強していきたいとする。既存の静止衛星を利用するため,帯域増強のために新たな衛星を打ち上げる必要がなく,利用するトランスポンダ(中継器)の数を増やすだけでよい。

 料金は定額制と従量制を選べる。定額制は3時間未満の短距離フライトで14.95米ドル。3時間~6時間の中距離フライトで19.95米ドル。6時間以上の長距離フライトで29.95米ドルである。つまり10時間以上のコペンハーゲン−成田間は29.95米ドルになる。従量制は短距離フライトで初期料金が7.95米ドル,中距離,長距離フライトで同9.95米ドル。30分経過後は1分ごとに25米セントの料金が加算される。

 成田からコペンハーゲンに向かう往路はシステムの故障で利用できなかった。復路では使わざるを得なかった。本誌に使う原稿が間に合わず,機内から送信する必要があったからである(NEブログ)。接続までに若干の時間を要するものの手順は意外に簡単だった(接続手順は図1図7)。原稿は無事に送信。窓の外の雲海を眺めつつ,あたかも会社にいるようにそれほどストレスなくホーム・ページを閲覧できてしまう。携帯電話機の急速な進化を語るとき「数年前は想像できなかった」とよく口にするが,機内インターネットにも同じような感覚があった。