オランダPhilips Semiconductors社は,非接触ICカード技術を使って機器間の無線接続設定を容易にしたシステムを試作,2005年3月14日から米ルイジアナ州ニューオリンズで開催中の「CTIA Wireless 2005」に出展した。近接無線規格「NFC(Near Field Communication)」を使い,機器間を接触させるだけでBluetoothの無線接続の設定を終了する。NFCの利用手法として,機器メーカーへの採用を狙っていくという。
今回見せたデモは,Bluetooth対応のPDAとヘッドホンを使ったもの。PDAで音楽を聴いている際に,友人のヘッドホンにも同時にBluetoothを使って楽曲を伝送するという使い方である。通常のBluetooth接続の場合では,ヘッドホンかPDAのどちらかの端末を使ってデバイスの探索や認証などの手順を採る。この際にはユーザーが,ディスプレイに表示された複数のBluetoothデバイスから1台を選択したり,何らかの情報を入力するといった処理が必要だった。
一方NFCを使った今回の場合,ヘッドホンとPDAを一瞬接触させるだけで,デバイス選択や認証といった手順を自動的に済ませる。ユーザーはボタン操作などに煩わされること無く,Bluetoothによる無線接続を使って楽曲をヘッドホンで楽しむことができるという。今回のシステムではBluetoothを使っているが,無線LANなどほかの無線接続の場合にも応用できるという。
NFCの普及促進団体であるThe Near Field Communication(NFC)Forumでは,同種の使い方を「バーチャル・コネクター」と呼んでいる。有線ケーブルで機器間を接続する際は,どの機器同士をつなぐのかという情報が,ケーブルを差し込むことで得られる。ところが無線接続の場合は,そうした選択をディスプレイ上で行うといった手間が生じる。NFCを仮想のコネクタとして使うことで,有線ケーブルによる接続のように簡素に接続設定を終了させるという考え方である。
これを使えばBluetooth対応携帯電話機とヘッドセットの接続や,車載ハンズフリー・キットとの接続設定なども容易にできる可能性がある。NFC Forumは,2005年後半にはBluetoothとNFCを共にに搭載した機器が製品化され,バーチャル・コネクター的な利用が始まると期待している。