MediaFLOの技術責任者を務めるRob Chandhok氏
MediaFLOの技術責任者を務めるRob Chandhok氏
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 米QUALCOMM Inc.は,携帯電話機向けに動画などを配信するサービス「MediaFLO」に関する記者説明会を東京都内で開催し,同サービスを日本でも事業化するため総務省に働き掛けを始めたことを明らかにした。2007年中にも,国内の主要都市で商用サービスを開始することを目指すという。

 MediaFLOでは動画や音楽などのコンテンツを,リアルタイムの放送あるいは蓄積型放送として,700MHz帯の無線周波数を使って携帯電話機に配信する。QUALCOMM社は2004年11月に新会社MediaFLO USA Inc.を設立し,2006年末までに米国の主要都市で商用サービスを始める準備を進めている(Tech-On!の関連記事)。一方の日本では携帯電話機に向けたテレビ番組の配信方式として,ISDB-T(地上デジタル放送)の1セグメント放送(以下,1セグ放送)を採用する動きが主流となっている。この点に関して同社は「1セグ放送とMediaFLOは共存する技術。MediaFLOでは,チャンネル数を増やしたり1チャンネル当たりの伝送速度を高めたりといった,1セグ放送では提供できないサービスを実現する」(クアルコム ジャパン 代表取締役 社長の松本徹三氏)と述べ,MediaFLOを1セグ放送の対抗技術として位置付けない方針を示した。つまり国内では1セグ放送の普及を前提としたうえで,MediaFLOを展開していくとする。

FLOの関連技術をライセンスへ


 QUALCOMM社は,MediaFLOで用いる無線伝送技術「FLO(forward link only)」に対応するチップセットを他の半導体メーカーも製造できるように,関連技術をライセンスすることを明らかにした。FLOは物理層の仕様として,変調方式にOFDMを採用する。搬送波数は4096で,各搬送波の変調方式はQPSKあるいは16値QAMである。ストリーミング・サービスにおけるチャンネル間の切り替え時間は1.5秒程度で,欧州で開発が進む携帯電話機向け放送技術「DVB-H」では5秒程度も要するのに比べて短くて済むという。連続視聴時間は4時間程度になる見込み。

 なおQUALCOMM社製のチップセットは,2005年末までにサンプル出荷が始まる予定だ(発表資料)。700MHz帯の放送波を受信するチューナIC「RBR1000」とOFDM復調IC「MBD1000」の2チップ構成である。MBD1000は20米ドル程度という。なおH.264の動画コンテンツの復号化処理などは,携帯電話機のアプリケーション・プロセサで実行させる。例えばMediaFLO対応チップセットとの組み合わせ例として,携帯電話機のベースバンド処理やアプリケーション処理を行う「MSM6500」を挙げた。

 MediaFLOによる放送サービスのセル半径は,通常の地上テレビ放送サービスと同等である。すなわち米国では20km~25kmになる。米国で人口が密集する個所に同サービスを展開する場合,300~400の送信局を用意すれば済む見込みだ。国内における放送波の出力電力は米国に比べて小さいため,送信局の数はこれよりも増える。QUALCOMM社は「サービスを日本全国に展開するには,NHKと同等の550局程度が1つの目安になるだろう」とした。

QUALCOMM社が描くMediaFLOのビジネス・モデル
QUALCOMM社が描くMediaFLOのビジネス・モデル
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