4月1日付でボーダフォン社長から会長になる津田氏。「2人体制で改革を急ぐ」
4月1日付でボーダフォン社長から会長になる津田氏。「2人体制で改革を急ぐ」
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 ボーダフォンは2005年2月7日,英Vodafone UK社の社長(Chief Executive)のBill Morrow氏が日本法人に転じ,代表執行役社長に就任することを発表した。現在の代表執行役社長兼CEOである津田志郎氏は取締役会議長 兼 代表執行役会長となる。いずれも2005年4月1日付で就任する。ボーダフォンは現行の津田氏による経営体制から,津田氏とMorrow氏の共同経営に移行する。

2人体制の意義を強調,「今はじっくり考えるよりスピードが大事」

 社長交代の記者会見で津田氏は,社長交代の理由として,ボーダフォンが現在抱える3つの大きな課題に対して自身だけで対処することの難しさを語った。具体的には,(1)J-フォンや東京デジタルホンなど旧会社時代の料金体系や情報システムなどがいまだに残っており,現行の体制と複雑に併存している,(2)全世界のVodafoneグループの一員であることの強みを生かしきれていない,(3)過剰なリストラに伴う人員不足や組織の縦割りといった問題を解決する必要がある,といった課題である。

 「2006年の番号ポータビリティーや新規事業者の参入が迫っており,改革に取り組むにしても時間は限られている。こうした課題に1人でじっくりと取り組むよりも,早期に解決することの方が重要と感じた」(津田氏)として,津田氏とMorrow氏の2人体制で取り組む必要性を強調した。「Morrow氏は2001年12月から2003年12月まで日本テレコムホールディングスの社長を務めるなど日本の通信事業にも詳しい。2人の力を合わせれば業績回復にプラスに働くだろう」(津田氏)としている。

 津田氏は2004年12月にボーダフォンの社長へ就任したばかりだが,4カ月で再び社長交代となる。この背景について津田氏は「Vodafone UK社の社長を務めたMorrow氏に対し,相応の処遇をする必要があると考えた」と説明する。津田氏とMorrow氏の詳細な役割分担については未定としているが,津田氏が引き続き日本法人の指揮を執るもよう。Morrow氏は経営戦略や商品企画の策定に際し,英Vodafone Group Plcとのパイプ役などを担うとみられる。

「2005年夏の3G端末は,消費者に受け入れてもらえる」

 津田氏は記者会見でボーダフォンを取り巻く環境について触れ,「2004年12月の契約純増数は900件にとどまった。2005年1月は5万8700件の純減と,さらに厳しい結果に終わった。当社を支援してくれる方々に申し訳なく思うし,結果を真摯に受け止めなければいけない」とした。この原因について津田氏は,上記の3つの課題に加え,第3世代携帯電話(3G)端末の投入が遅れたこと,ボーダフォンが注力しているプリペイド方式の携帯電話サービスの悪用が相次いでイメージが悪化したこと,などが響いたと分析している。

 ボーダフォンの端末に消費者が魅力を感じていないとの指摘に対しては,「2004年冬の3G新機種では,国内と海外の双方で利用できるという点を優先した。その結果,日本市場で求められるような最先端の仕様を一律に採用することが難しかった」(津田氏)と,問題点の存在を認識していることを示した。今後については「新製品投入のステップを経るごとに改善されていく。現在は現行機種の問題点の分析を進めており,2005年夏に発売する3Gの後継機種では必ず消費者に受け入れてもらえるようにする」(津田氏)と前向きな姿勢を示した。