図1 実証実験の概要を説明する坂村氏
図1 実証実験の概要を説明する坂村氏
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図2 2次元バーコードを印刷した紙(図中赤丸部)と無線タグが張り付けられたケース
図2 2次元バーコードを印刷した紙(図中赤丸部)と無線タグが張り付けられたケース
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図3 店頭に設置する2次元バーコードを読み取るための情報端末。画面には食品の生産履歴などが表示される
図3 店頭に設置する2次元バーコードを読み取るための情報端末。画面には食品の生産履歴などが表示される
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 ユビキタスIDセンターが三越日本橋本店の協力を得て,無線タグを使った店頭実験を開始した(図1)。同店の食料品売り場に並ぶメロンなどの高級果物,牛肉,豚肉などを対象とする。今回の店頭実験は2005年2月2日から2週間に渡って行う。実験に参加するのは,アサヒブロイラーと今半,サン・フルーツ,静岡県温室農業協同組合静南支所,東京青果,二幸,ミートコンパニオン,横須賀テレコムリサーチパークである。ユビキタスIDセンターは2004年2月にも京急ストアとよこすか葉山農業共同組合,横須賀青果物,横須賀テレコムリサーチパークと1カ月間に渡って店頭実験を行っている(Tech-On!関連記事)。

 今回の店頭実験では昨年京急ストアで行った実験と大きく異なる点がある。無線タグと2次元バーコードを併用したのである。商品の前に無線タグを張り付けた透明のケースを設置し,そこに2次元バーコードとバーコードを印刷した紙を入れた(図2)。商品の生産履歴などを確認したい場合は,ユビキタスIDセンターが開発した無線タグを読み取るための携帯型情報端末「ユビキタス・コミュニケータ」をケースにかざして使う。もしくはケースに入れてある,2次元バーコードを印刷した紙を店頭に設置した情報端末にかざして,生産履歴などの情報を表示させる(図3)。

 生産現場から店頭までを無線タグで管理し,商品販売後は2次元バーコードを使って生産履歴を確認するといった具合に,無線タグと2次元バーコードを併用したたことでより多くの消費者にとってトレーサビリティが身近なものになりそうだ。携帯電話機の多くは2次元バーコードを読み取る機能を備えており,当たり前の機能になりつつあるからだ。携帯電話機を使えば家庭でも容易に生産履歴などの情報を確認できる。昨年行った実験では生産現場から店頭,消費者までのすべてを無線タグで管理することを前提としていた。そのため実証実験に参加するモニターをわざわざ募って,ユビキタス・コミュニケータを貸し出していた。この方法だと消費者が手軽に無線タグのリーダー機能を備えた機器を保有するようにならないと,実用化が難しい。
 
 無線タグと2次元バーコードを併用した利点はもう1つある。米国などで問題視されているプライバシー問題の解決にもなる。無線タグを張り付けた状態で商品を販売すると,買い物帰りなどに無線タグのリーダーを使って第三者に勝手に読み取られてしまう恐れがある。つまり,消費者が知らないところで何を購入したのかなど,個人情報が外部に漏れてしまうわけだ。ところが今回のように2次元バーコードを利用すれば,こうした個人情報が流出する可能性は低くなりそうである。