横河電機が開発した「光メディアマネージャ」 Ethernetフレームと光パケット間のメディア・コンバータとして利用する。2006年には製品化する予定。
横河電機が開発した「光メディアマネージャ」 Ethernetフレームと光パケット間のメディア・コンバータとして利用する。2006年には製品化する予定。
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 横河電機は2005年1月17日,「光パケット・ネットワーク」をリング状に構築し,その上で映像データを40Gビット/秒のデータ伝送速度で送受信することに成功した,と発表した。光パケット・ネットワークとは,ネットワークの各ノードでパケットを光電変換せずに光信号のまま転送するネットワークのことである。ただし,パケットのラベル部だけは電気的に処理して宛先を読み取る。同社は光スイッチング素子やそれを実装した光パケット・スイッチを2004年2月に発表済みである(関連記事1関連記事2)。

 今回は,それら既存の技術をそれぞれ高度化した上で,光パケット・ネットワークとEthernetとのメディア・コンバータ兼多重化装置となる「光メディアマネージャ」を開発し,パソコンなど端末を接続してデータを送受信するリング状のネットワークを構築した。同社は今回のシステムを1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催する光通信関連の展示会「ファイバーオプティクスEXPO(FOE)2005」で公開する予定である。

 今回,横河電機の開発や改善のポイントは(1)以前は2×2チャネルだった光スイッチ素子を4×4チャネル,あるいは6×6チャネルや8×8チャネルと多段化を進めて,信号を出力しないポートへの光の漏洩を大幅に低減した,(2)光ファイバをループ状にした遅延回路と光スイッチ素子を組み合わせた「光バッファ」を開発した,(3)化合物半導体で独自開発した共鳴トンネリング・ダイオードの非線形な特性を利用して,光ラベル認識回路のデータ処理速度を従来の2.5Gビット/秒から40Gビット/秒へと高速化した,(4)ギガビットEthernetや10Gビット/秒Ethernetインタフェースを持つ多重化装置の開発,の4点である。

 (2)の光バッファは,光スイッチ素子を構成する入出力チャネルの1組に,長さ42mの光ファイバで作ったループ状の回路を接続したもの。光信号をこのループに1度通すと210ns,2度通すと420nsと,ループに通す回数でバッファリング時間を制御できる。横河電機は「光メモリの代替として使用している」という。

 (3)の光ラベル認識回路は,パケットのラベル部を1ビットずつ光電変換した上で,前のビットとのANDとORの論理演算を行い,ラベルのパターンを認識する回路。「今回開発した共鳴トンネリング・ダイオードは,状態の切り替え時間が2ps(ピコ秒)~3psと非常に高速な信号のラッチ(latch)処理を実現できる。これで40Gビット/秒でのデータ処理が可能になった」(同社)。横河電機は「ラベル処理の高速化は,情報の転送効率の向上につながる」という。

 同社は今回,これらの技術を使って実際にリング状の光パケット・ネットワークを構築し,データ伝送のデモも公開した。デモは,サーバ用パソコン1台に装着したDVDデータを,2台のパソコンが光パケット・ネットワークを通してダウンロードするというもの。今回のネットワークは「最大10台のパソコンをサーバに接続して,それぞれ10秒で2時間分の映像データをダウンロードできる」(同社)という。