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 ソニーは,独自の映像信号処理技術「DRC-MFv2」を搭載した映像信号変換装置「クリエーション・ボックス」を発売する(図1,ニュース・リリース)。同製品は,チューナやDVDなど映像信号を出力する機器と,CRTテレビや薄型テレビなど表示機器の間に配置する。入力信号がSDTV信号の場合はHDTV信号にアップ・コンバートする。HDTV信号の場合は,より解像感を高めたHDTV信号に変換できるという。「高画質を追求する,スペックだけでは表現できない,全く新しいタイプの商品だ」(同社 執行役 副社長 兼 COOの高篠静雄氏)。

 ソニーは,今回の製品を「QUALIA」ブランドで発売する。受注生産とし,2005年1月29日に注文を開始する。価格は52万5000円。これまで発売されたQUALIAブランドの製品には,それぞれ通し番号が付けられており,今回の製品は「QUALIA 001」となる。同社は「『001』という番号から分かるように,QUALIAの最初の認定商品だ。開発には長い期間を掛けており,魂をつぎ込んだ商品」(高篠氏)と位置付ける。

 今回の製品の中心となる技術「DRC-MFv2」は,ソニーがテレビの差異化技術として従来から開発を進めている映像信号処理技術「DRC(デジタル・リアリティ・クリエーション)」の最新版である。既に2004年8月に,同技術の概要については発表済み(関連記事1)。入力した映像信号を,仮想した「実際の被写体により近い忠実な映像信号」に作り変えていく機能に加え,映像信号の見たい部分を切り出して拡大表示させる「クリエーション・ビュー」機能を搭載したものである。同社は,このDRC技術を映像商品の差異化技術として位置付けているため,例えば2004年12月に韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.と締結した特許の包括クロスライセンス契約では,除外対象にしている(関連記事2)

拡張用端子を備える

 ソニーは,同社のテレビ「WEGA」にも順次DRC-MFv2を搭載していく予定であり,既に2004年11月に発売した液晶テレビ「QUALIA 005」では,クリエーション・ビュー機能を除くDRC-MFv2の機能を画像処理モジュール「ベガエンジンHD」に組み込んだ(関連記事3)。同社のテレビと,今回の製品の切り分けについては「最新のテレビには確かにDRCの最新技術が搭載されているが,それまでのテレビには搭載されていない。テレビは1度買ったら,なかなか買い換えないため,十分補完関係にある」(同社 上席常務の近藤哲二郎氏)と説明する。

 今回の製品についてソニーは,テレビの買い替えサイクルが長いことで生じる技術の不連続を解決するものだと主張する。例えば,「今テレビを購入すると,数年間~10年間は買い換えない。しかし,テレビの信号処理技術に要求される内容は刻々と変化しており,進化のスピードが速い」(同社の近藤氏)という。そこで同社は,今回の製品に将来の拡張用のための端子を設けた(図2)。どのような機能を追加していく可能性があるかについて,詳細は明かさなかったが「さまざまな方向で検討を進めており,1年~1年半くらいで形が見えてくる」(近藤氏)とした。

上部のカバーを外すと,拡張用の端子が確認できる
上部のカバーを外すと,拡張用の端子が確認できる
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