図1 「iPod shuffleはガムより小さい」とSteve Jobs氏が強調 iPod shuffleの寸法は高さ約8.4cmx幅約2.5cmx厚さ0.8cm。重さは約22gである。Apple社のWWWサイトには,「iPod shuffleを食べないように」との注意書きがある
図2 もう一つのminiが登場 Jobs氏は,キーノート・スピーチで「Mac mini」を公開した
図3 USBメモリとよく似たiPod shuffle iPod shuffleはUSB 2.0に対応し,パソコンのUSBポートに接続すれば,データ転送ができる。楽曲ファイルの再生以外に,他のデータを保存する機能もある
図4 Jobs氏のキーノートで見せたMotorola社のiTunes対応携帯電話機

 米Apple Computer, Inc.は,米サンフランシスコ市で開催中の「Macworld Conference & Expo」で,フラッシュEEPROMを搭載した小型・低価格の携帯型音楽プレーヤー「iPod shuffle」を発表した(発表資料その1図1)。同社CEOのSteve Jobs氏が,キーノート・スピーチで公開した。Jobs氏はさらに,小型・低価格のデスクトップ・パソコン「Mac mini」も披露(発表資料その2図2)。いずれも,米国では発表前から登場が噂されていた製品である。

液晶パネルなしのiPod

 外観を見る限り,iPod shuffleは液晶パネルを省き,iPodに似たユーザ・インターフェースを備えるUSBメモリと言える(図3)。その最大の特徴は価格設定である。記録容量が512Mバイトの製品が99米ドル(日本では税込み1万980円),1Gバイトの製品が149米ドル(日本では税込み1万6980円)と,今までのiPodと比べて安い。データの保存しかできないUSBメモリと比べても,価格の上乗せ分はそれほど大きくない。例えば,オンライン・ストアのAmazon.comは,米国の1月11日現在で, 512MバイトのUSBメモリを39.98~113.99米ドル,1Gバイト品を79.99~126.99米ドルで販売している。

 低価格にすることで,Apple社はiPod shuffleを大量に販売できると期待している。「iPod shuffleこそ,iPodを万人が楽しめるようにするもの」(Jobs氏)。iPod shuffleは米国では今日発売,日本では1月15日である。なお,Apple社はiPod shuffleに内蔵したフラッシュEEPROMの製造元を公開していない。製品の価格を見る限り,Apple社はフラッシュEEPROMを大量に注文して,価格の引き下げを図ったと見られる。

 今までApple社は,フラッシュEEPROMを搭載する他社の携帯型音楽プレーヤーを批判してきた。「既存の製品のユーザー・インタフェースでは,ユーザーは非常に小さな液晶パネルで楽曲を選択する苦しみを味わっていた」(Jobs氏)。この問題に対処するために,同社はあえて液晶パネルを省き,楽曲を自由に選べないようにした。iPod shuffleでは,ユーザは2つの選択肢のいずれかを選んで楽曲を再生する。楽曲を自動的にランダムな順番で再生する,いわゆる「シャッフル・モード」と,Apple社の音楽ジュークボックス・ソフトウエアiTunesであらかじめ設定したプレイリストをそのまま再生する「プレイリスト・モード」の2つである。このうちApple社が強調するのが,製品の名称が示すように前者のシャッフル・モードである。iPod shuffleの広告を見ると,今後Apple社は次にどの曲が再生されるか分からないシャッフル・モードの「楽しさ」を強調するキャンペーンを展開しそうだ。既存のiPodでシャッフル・モードの人気が高いことが,今回の製品の発想につながったという。

 iPod shuffleの裏には,シャッフル・モードとプレイリスト・モードを切り替えるスイッチがある。前面には,楽曲の「再生」や「ポーズ」,「次の曲に飛ばす」,「前の曲に戻す」,「ボリューム・アップ」,「ボリューム・ダウン」のボタンがある。

 Jobs氏はキーノート・スピーチで,Apple社と米Motorola Corp.が共同で開発中のiTunes対応の携帯電話機(Tech-On!関連記事)の写真も見せた(図4)。ただし,2005年春に出荷する予定という以外,詳しい情報は公開しなかった。

モニタやキーボードは自分で用意

 iPod shuffleと同様,Mac miniでApple社が強調するのは,寸法が小さいことや低価格であることだ。「我々には低価格のMacが必要だとよく言われる。ただし,安いだけでは面白くない」(Jobs氏)。Mac miniの設置面積は16.5cm x 16.5cm,高さは約5cmと小さい。ノート・パソコンと同じように,ACアダプタを本体の外に置く。動作周波数1.25GHzの PowerPC G4と40Gバイトの2.5インチ型ハード・ディスク装置(HDD)を搭載する「1.25GHz Mac mini」の価格は499米ドル(日本では税込みで5万8590円)。1.42GHzの PowerPC G4や80Gバイトの2.5インチ型HDDを搭載する「1.42GHz Mac mini」は,599米ドル(日本では税込みで7万0140円)である。Mac miniの米国発売日は1月22日,日本では1月29日である。なお,Mac miniを利用するために,ユーザは自分でキーボードやマウス,モニタを用意する必要がある。

 Apple社はMac miniの投入で,Macintoshの普及が加速すると期待している。「Mac miniの価格設定は,(Windowsパソコンからの)切り替えや,2台目のMacの購入で悩んでいるユーザにとって,選択を容易にするものだ」(Jobs氏)。個人のスペースが限られている日本の市場でも,人気製品になる可能性がある。