「裁判所の職権をもって,和解を勧告します」。米University of California Santa Barbara校(UCSB)教授の中村修二氏が日亜化学工業在籍時に発明した特許の対価を巡る裁判において2004年12月24日に最終の口頭弁論が開かれ,東京高等裁判所は中村氏側と日亜化学工業側の双方に和解に向けた話し合いを進めるように勧告した。東京高等裁判所は,提出された中村氏と日亜化学工業それぞれの準備書面を見ると中身的にも双方隔たりがあるが「紛争を円満に終結するのに越したことはない」とした。そうした上で,中村氏側と日亜化学工業側に和解のテーブルに着く意思があるかどうかを尋ねたところ,日亜化学工業側は「はい」と即答し,中村氏側は「裁判所の判断に任せます」と裁判所の提案を受け入れる考えを示した。これまで中村氏と日亜化学工業はそれぞれ,裁判で徹底的に戦うとの考えを示していた。それだけに,和解を話し合う場を今回設けることで,中村裁判が一気に終結する可能性も高まった。仮に,和解が成立しない場合,東京高等裁判所は2005年3月28日の朝10時に判決を言い渡す。

 東京高等裁判所における中村氏と日亜化学工業の訴訟は,GaN系化合物半導体などの結晶膜を形成する技術に関する特許技術(特許第2628404号)について,日亜化学工業が中村氏に支払う相当の対価の金額を巡るもの(関連記事1)。東京地方裁判所が2004年1月30日に判決を下した裁判に対する控訴審である。東京地方裁判所の判決では,日亜化学工業に対し,200億円を中村氏に支払うよう命じた(関連記事2関連記事3関連記事4)。判決を受けた日亜化学工業は,直ちに東京高等裁判所に控訴した。