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産総研,CNTを使った多値磁性メモリの理論を発表

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2003/07/28 00:00
神保 進一
出典:日経ナノテクノロジー, (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
 独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研,AIST:National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)ナノテクノロジー研究部門 ナノ構造物性理論グループの古門 聡士 氏(写真1)らは,強磁性体/磁性金属原子を内包したカーボンナノチューブを使って磁性体メモリの多値化を実現できることを理論計算で明らかにした。淡路夢舞台国際会議場で開催した「第25回フラーレン・ナノチューブ記念シンポジウム」の2日目(2003年7月24日)に「強磁性体/磁性金属内包ナノチューブ/強磁性体接合のスピン依存伝導:多値化に関する理論検討」と題して発表したもの。

 これは,異なるスピン・ベクトル(極性と絶対値)を持った二つの強磁性体電極を接合し,それぞれのスピン・ベクトルの和をメモリの値とする方式(写真2)。スピン極性の組み合わせが(上・上),(上・下),(下・上),(下・下)の4種類があり,スピンベクトルの和の絶対値でこの4種類を区別する。一つの強磁性体電極がメモリセル1ビット分に相当し,一つの接合系で2ビット分の値を表現できる。実際には, 二つの強磁性体電極をCo, Niなどとし, それぞれに磁場を適用することで, 4種類の組み合わせを実現する。

 外部からの磁場作用(書き込み)によって発生する4種類の値は,二つの強磁性体電極の接合材料に流れる電流値を計測することで区別する(読み出す)。二つの強磁性体を接合する材料は,それ自体のスピン極性が安定している必要があり,直径10nm〜100nmの磁性金属を内包したカーボンナノチューブが適している。この大きさの磁性金属は保磁力が高く,磁化が固定する性質があるからだ。さらに,カーボンナノチューブは,長さ130nm以下では伝導電子がスピン反転しにくいという性質もある。

 計算結果によると,カーボンナノチューブが金属なのか半導体なのかによらず,電流値を計測することで,スピン・ベクトル4種類の値を区別できることが分かった。写真3には,カーボンナノチューブが金属性質を持ち,長さが直径の20倍の場合を示している。(神保 進一)

【写真1】産総研 ナノテクノロジー研究部門 ナノ構造物性理論グループの古門 聡士 氏
【写真1】産総研 ナノテクノロジー研究部門 ナノ構造物性理論グループの古門 聡士 氏

【写真2】カーボンナノチューブを使った多値磁性体メモリの概念
【写真2】カーボンナノチューブを使った多値磁性体メモリの概念

【写真3】強磁性体/磁性金属原子内包カーボンナノチューブの電流値を計測してスピン・ベクトル4種類の値を区別することができる
【写真3】強磁性体/磁性金属原子内包カーボンナノチューブの電流値を計測してスピン・ベクトル4種類の値を区別することができる