三井物産の100%出資子会社であるカーボン・ナノテク・リサーチ・インスティチュート(CNRI,本社東京)の取締役研究所長である西村邦夫氏は,米国のHyperion Catalysis International社が持つ多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に関する特許について,「もちろん争ってみなければ分からないが,それほど怖くない」という見解を明らかにした。

 Hyperion社の特許は,1984年に取得した外径3.5~70nmのMWCNTの物質特許をはじめ,いわゆる製法特許や応用特許など多岐にわたる(2002年2月5日付の記事参照)。だが,「我々の調査では,どの特許も最初の物質特許から派生したもの。その物質特許も,それ以前に日本の企業が特許を出願していたり,30年以上も前に,信州大学の遠藤先生(工学部教授の遠藤守信氏)が論文を書いていたりする。Hyperion社が特許を取得した時点では,すでに公知で,物質特許は無効になる可能性が高い。そうすれば,そこから派生した特許はすべて効力を失うことになる」と,西村氏は説明する。

 こうした見解に基づき,CNRIは2001年末に発表した計画(2001年12月27日付の記事参照)どおり,2002年5月にMWCNTと単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のサンプル供給を,それぞれ年産1tレベルのベンチプラントを使って開始する。同年9月に,外径20nm,平均10層のMWCNTを,年産120t規模で製造するセミコマーシャルプラントを稼動し始める計画も,予定どおり進めるという。