車両開発の大きなテーマとなっている軽量化技術。欧米が新しい材料を積極的に使っているのに対して、日本は高張力鋼板を軸に進めている。このままで2030年までの燃費規制や安全快適装備の質量増に対応できるのか?世界で競争力を高めるための、軽量化の方向性を見直す。

写真提供:Ford Motor社

 2020~2030年に向けて燃費規制が強化される中、自動車をどれほど軽量化すればよいのか。その実現方法にはどんな手法があるのか──。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がこのほど実施した委託調査で、ガソリンエンジン車の車両質量を2014年に比べて2020年に12%、2030年には37%軽くする必要があることが分かった。また、鋼板が多く使われている構造部(ホワイトボディーと外板)の軽量化手段として、三つのシナリオをまとめた。

 今回の調査で分かるのは、欧米メーカーが積極的にアルミニウム合金や樹脂材料を使って軽量化を進めるのに対して、日本メーカーは従来の高張力鋼板に依存して軽さを追求している点だ(図1)。高張力鋼板を使うと2020年の軽量化目標はクリアできても、2030年の目標をクリアすることが難しくなり、大幅な方針転換を迫られることになる。日本メーカーは、今回提示した三つのシナリオを基に、新しい材料の採用について検討する時期に来ている(図2)。

図1 材料の革新で車体の軽量化を進める欧米勢
(a)ドイツBMW社の電気自動車(EV)「i3」はCFRP(炭素繊維強化樹脂)、(b)米Ford Motor社のピックアップトラック「F-150」はアルミニウム合金を採用して、大幅に軽量化した。骨格の軽量化技術を高張力鋼板に頼っている日本メーカーは、新たな材料置換が求められる。
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図2 2030年への軽量化シナリオ
どの材料を選ぶかで、シナリオA~Cまでの三つを用意した。Aは高張力鋼板を限界まで使う、Bは部位別に最適な材料を使う、CはCFRPで軽くする。(出典:NEDO)
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