電気自動車(EV)向けにエネルギー密度の向上が求められているリチウムイオン電池(LIB)。その質量エネルギー密度を「リーフ」など現行EV向けLIBの6倍超に高められる可能性を持った新しい正極材の候補が登場した。東京電機大学工学部環境化学科准教授の薮内直明氏らの研究グループが合成に成功したマンガンニオブ酸リチウム(Li1.3 Mn0.4 Nb0.3O2)だ(図)。

図 東京電機大学が合成に成功した新正極材
左が合成したマンガンニオブ酸リチウム。右のような岩塩型(NaCl型)の構造をとる酸化物だ。
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 マンガンニオブ酸リチウムは、その化学式からも分かるようにニオブ酸リチウム(Li1.5Nb0.5O2)のニオブ(Nb)とリチウム(Li)の一部を、マンガン(Mn)に置換した材料だ。LIBの正極材として一般的なコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウム、3元系などと同じ岩塩型(NaCl型)の構造(面心立方格子)だ。だが、これらとは違ってリチウム(Li)原子の配列が層状になっていない。すなわち、岩塩(NaCl)の塩素(Cl)原子の位置に酸素(O)原子が入り、ナトリウム(Na)原子の位置に遷移金属のMn原子か同Nb原子、あるいはLi原子のいずれかがランダムに入った構造を取る。