日本メーカーの競争力の象徴として、世界で高く評価されてきた「品質」。だが、自動車関連で大規模リコールが相次ぎ、免震ゴムの性能偽装も発生する中で、それが揺らいでいる。自動車は電動化・自動化が加速して複雑化。部品調達もグローバル化し、品質管理が難しくなっている。工場でもベテラン技術者の退職に伴う世代交代が進んでいる上、雇用形態の変化で「QCサークル」など製造現場の強さを支えてきた活動が弱まりつつある。日本メーカーの品質を取り巻く課題と、それを克服するためには何が必要なのかに迫った。
甦れ、日本の品質
目次
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90歳のトヨタ名誉会長が鳴らす警鐘、 ものづくりの原点、品質を再強化せよ
2015年6月5日、火山活動の活発化が懸念される神奈川県箱根町の「箱根ホテル小涌園」に、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎氏が姿を現した。日本科学技術連盟(日科技連)が主催する「第100回 品質管理シンポジウム」で講演するためだ。同年初めに足を悪くしたため、杖をつきながら来場した90歳の豊田氏は、熱の…日経ものづくり
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大規模リコールの教訓を生かし、ものづくりを全面的に刷新
トヨタ自動車
トヨタ自動車にとって2月24日は忘れられない日だ。2010年の同日、社長の豊田章男氏が米下院の公聴会で自ら証言台に立ち、2009~2010年に発生した大規模なリコール問題に関する数々の厳しい質問に懸命に答弁した(図1)。日経ものづくり
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国内で品質磨き上げ、世界に展開、正社員化進め、QCサークル活性化
コマツ
全自動ブレード制御で整地が可能な「ICT(情報通信技術)ブルドーザー」や「ハイブリッド油圧ショベル」「無人ダンプトラック運行システム」など、さまざまな世界初の製品を開発してきたコマツ。同社はこれらの建機で高い世界シェアを獲得している。日経ものづくり
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開発期間延ばしても統合品質を検証、クルマ1台を見通せる人材を育成
ホンダ
2013~2014年にかけて立て続けに「フィット ハイブリッド」のリコールに見舞われたホンダ。発売直後の2013年10月と同年12月に続き、2014年2月と同年7月にもリコールを発表し、続く同年10月には5回目のリコールに至った(図1、表)。フィット ハイブリッドと同じパワートレーンを搭載する「ヴェ…日経ものづくり
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メーカー並の品質管理体制を構築、海外工場指導で新たな垂直統合へ
ニトリ
「品質の担保が競争力になっている」──ニトリホールディングス(以下、ニトリ)特別技術顧問製品安全・品質統括の杉山清氏はこう語る。家具の製造小売りとしては異例といっていいほど品質検証に力を入れている同社。実際、他の家具小売りの売り上げが伸び悩む中、同社の売上高はここ10年で4倍以上に伸長した。直近20…日経ものづくり
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顧客志向優先で品質を追求、生産ラインからの不良流出も低減
セキソー
「エンドユーザーであるドライバーや同乗者を意識して、自動車メーカーでは気付かない部分を提案していきたい」──。自動車用の防音・防振部品などを開発・製造するセキソー(本社愛知県岡崎市)は、2012年から導入したTQM(総合的品質管理)活動によって、製品開発のあり方をエンドユーザーを意識した提案型へ変貌…日経ものづくり
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6割弱が設計品質の低下を実感、人材確保とスキル養成が急務
調査テーマ「日本製品の品質」
品質が競争力の源泉であるとの見方は以前として根強い。一方で品質の低下に対する危機感も広がっている。特に、懸念されるのが設計品質の低下だ。精度や安全性などで品質レベルの要求が高度化するとともに、多様化する顧客の要望に幅広く対応する機能やサービスも求められるなど品質の範囲も拡大し、設計品質の作り込みが難…日経ものづくり