2013年9月19日、JR函館本線の大沼駅構内で運行中の貨物列車が脱線した。直接的な原因は、レール(軌道)が整備基準値を超えて変形していたこと。だが、根本的な原因は、その状態を長らく放置していたことにある。ずさんな保守体制がもたらした「必然の事故」だった。

 運輸安全委員会は2015年1月29日、事故原因や再発防止策などをまとめた調査報告書を公表した1)。以下では、その内容に沿って事故の全容を見ていく。

全18両のうち4両が脱線

図1●脱線した車両
18両編成の6~9両目が脱線した。出所:運輸安全委員会
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 脱線した列車は、日本貨物鉄道(以下、JR貨物)の帯広貨物駅発熊谷貨物ターミナル駅行き18両編成の「臨高速貨第8054列車」(以下、8054列車)である(図1)。2013年9月16日に帯広貨物駅でコンテナを搭載した8054列車は、機関車にけん引されて同月17日に東室蘭操車場に到着した。その後、同月19日に機関車を取り替えた上で、同操車場を定刻の14時4分に出発。北海道旅客鉄道(以下、JR北海道)室蘭本線の東室蘭駅~長万部駅、および函館本線の長万部駅~五稜郭駅を経由し、熊谷貨物ターミナル駅まで運行する予定だった。