「知識詰め込み型から脱却し、知識を応用して社会に価値のあるものを創造する力の養成を目指している」──金沢工業大学副学長・教育担当の佐藤恵一氏は、同大学の教育方針をこう語る。同大は、地方の私立大学にも関わらず、98.8%という高い就職率を誇る。それを支える授業が、企業が求める技術者の育成を意識した「プロジェクトデザイン」(PD)だ。

課題解決できる人材を育てる

 PDは、学生が教官の指導の下、自ら設定した課題についてその解決策のアイデアを考え、実際に製品やプログラムなどを造る課題解決型の授業。金沢工業大学では、これを教育プログラムの軸とし、通常の教養科目や専門教育科目がPDを取り巻くように授業を設計している。「実際の問題への対応力を養うため、社会と切り離した教育ではなく社会にイノベーションを与えられる人材を育てる」(佐藤氏)ためだ。

 PDは、具体的には1年生が前期に履修する「PD入門」から、「PDI」(1年生後期)、「PDII」(2年生前期)、「PD実践」(2年生後期)、「専門ゼミ」(3年生)、「PDIII」(4年生)の6ステップから成る(図1)。PD入門では、5~6人のチームを組んで、レポートの書き方や計測機器の使い方など、後に課題に取り組むための基本技術や姿勢を学ぶ。続くPDIでは、チームで具体的なテーマを設定した上で、そのテーマに沿って問題の発見と明確化、アイデアの創出・評価・選定、アイデアの具現化という問題解決のプロセスをなぞる。テーマは所属学科の専攻に縛られず「自転車の交通事故防止対策」といった比較的抽象度が高いものを設定する。ここまでは机上での検討である。

図1 金沢工業大学の教育体系
プロジェクトデザインの授業を中核に、それに付随する形で教養分野の基礎科目や専門科目がある。加えて、充実した「オナーズプログラム」で、実際の問題解決に挑む場を提供している。
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