2005年。「ムーアの法則40年」に当たるこの年の4月15日、本誌はGordon Moore氏にインタビューする機会を得た。これまで秘蔵してきた内容を改めて紹介する。今からちょうど10年前、当時76歳だった同氏はムーアの法則について、40年の継続でさえ想定外だったと語った。(聞き手=枝 洋樹)

――この40年間の半導体産業において、ムーアの法則はどのような役割を果たしたと考えますか。

 過去30年間については、(半導体の集積度は)2年ごとに2倍になると予想してきましたが、実際にはそれを少し上回りました。これは私にも驚きでした。このトレンドを維持することは非常に難しいと考えていましたが、業界はこれを少し上回るだけの努力をしたということでしょう。

――半導体技術の進化のスピードには、自分でも驚かれたということですか。最初にこの法則を発見した時は、どの程度の期間にわたって成立すると考えていましたか。

 当初の予測は10年間についてのみ行ったもので、それでも非常に野心的なつもりでした。当時は集積回路が登場して3年たったばかりで、参考にすべき歴史というほどのものもなかったからです。結果として、私が思っていたよりもはるかに正確な予想をしたことになりました。

――当初、期間を10年としたのはなぜですか。

 Electronics誌から10年間の予想をするように依頼されたからです。依頼の内容はその時点から10年間に、テクノロジーの世界で何が起こるかを知りたいというものでした。しかし半導体産業のような動きの速い業界では、10年先というのは予想の対象となり得る限界だと私は思います。

――Electronics誌からの依頼に応じて10年という期間を設定されたということですね。

 そうです。当時は10年でも非常に大胆だと思いました。