3Dプリンターは今、世界で最も注目されているものづくりの技術だろう。型を使った鋳造や切削加工といった従来の造り方からの置き換えが進む、熟練技能者に頼らざるを得なかった部分が減るといったように、ものづくりプロセスが大きく変わろうとしている。製造面だけでなく、製品の設計自体が変わり、今までにない新しい発想の製品を造れるようになったり、設計データの補完で必要に応じて部品を造ることができるので補修部品の保管が不要になったりと、製造業に与えるインパクトは大きい。

 既に、米国やドイツ、英国などの先進国では3Dプリンターで造った新しい製品が次々と生まれている。そこでは、単に3Dプリンターを導入しているというだけでなく、材料や造形条件に関するノウハウを蓄積したり、既存技術との補完を進めたりと、使いこなしのレベルがどんどんと上がっている。今回は、3D金属積層造形装置(以下、金属3Dプリンター)の活用について、いくつかの事例を交えながら紹介しよう。

溶接技術で70年以上の歴史

 最初に、当社について簡単に紹介しておく。当社は創業以来70年以上にわたってアーク溶接を中心とした溶接関連ビジネスを国内で展開し、そのノウハウを蓄積してきた。2011年にはレーザー溶接機器、2012年には金属粉末を吐出しながらレーザーを照射して肉盛溶接を行うドイツTrumpf社製のLMD(LaserMetal Deposition)装置の取り扱いを開始。2013年10月には金属粉末のメーカーである英LPW Technology社と、2014年4月にはSLM(Selective Laser Melting)法の金属3DプリンターのメーカーであるドイツSLM Solutions社と日本代理店契約を締結した。

 これらに共通するのは金属を溶融して凝固させるという現象であり、溶接関連ビジネスで蓄積してきたノウハウが生かせる。また海外製の溶接関連機器や工作機械などのサポートやメンテナンスを実施してきた経験もある。そこで、2014年4月からこれらを組み合わせた金属積層造形ソリューション「アームス(AAMS:Aichi's AM Solutions)」として「3D金属積層造形事業」を本格展開することにした(図1)。

図1 愛知産業の試験加工ルーム
アーク溶接機やレーザー溶接機、LMD装置などを使ったさまざまな設備、LMS方式の金属3Dプリンターなどの実機を設置し、さまざまな技術提案を行っている。
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