鋼(スチール)とアルミニウム合金の接合技術を使って軽量化したフロント・サブフレーム(以下、サブフレーム)の開発について解説する。まず、このサブフレームの開発の背景について説明し、続いて接合技術を含む新技術について説明する。

* 2014年9月29日に日経ものづくりが開催したセミナー「異種材料接合・最前線」の佐山氏の講演を再編集した。講演の詳細は書籍「異種材料接合」(日経BP社、2014年12月発行、p.133)に収録した。

サブフレームの軽量化の必要性

 自動車では軽量化が重要な開発テーマである。世界中で人口の増加や経済発展などでエネルギー消費量が増大していく中、地球温暖化の観点からも二酸化炭素(CO2)を減らしていかなければならない。日本国内の産業別のCO2排出量は、全体の約20%を運輸関係が占めており、国立環境研究所地球環境研究センター温室効果ガスインベントリオフィスによれば、その中の90%が自動車からの排出である。従って全体のCO2排出量を下げるには、自動車のCO2を削減することが大きな課題である。

 しかも世界各国のCO2排出の規制値は年々厳しくなっている。現在は、従来と比べて1/10といったオーダーで下げなければならない時代になっている。

 自動車のCO2の削減には、燃費の改善が必要である。その方法として、パワートレイン系と車体系の2つの方向性がある。パワートレイン系としては、エンジンの熱効率の改善や、トランスミッションの伝達効率の改善、ハイブリッド車(HEV)化、バッテリーを使った電気自動車(BEV)化、燃料電池車(FCV)などがある。一方の車体系としては走行抵抗の低減が挙げられ、軽量化や転がり抵抗の低減、そして空力(空気抵抗の低減)の工夫が必要になる。中でも軽量化は大きな柱である。我々はここでサブフレームの軽量化に着目した。