2015年1月に米国で開催されたデトロイトモーターショー(NAIAS 2015)*1では、大手自動車メーカー各社がさまざまな新型車やコンセプトカーを華々しく発表した。その中で大きな注目を集めたベンチャー企業があった。米Local Motors社である。

*1 正式名称は「NORTH AMERICAN INTERNATIONAL AUTO SHOW (北米国際自動車ショー)」。2015年1月12~25日に開催された。

革新的なクルマづくり

 同社は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のボディをまとった電気自動車(EV)「Strati」を出展。このCFRP製ボディを、大型3Dプリンターで造形したのだ(図1)。3Dプリンターを使うことのメリットとして同社が挙げるのが、「製造スピードが大幅に向上する」、「巨大な工場が不要になる」、そして「個人の好みに合わせて柔軟にカスタマイズできる」ということだ。

図1 3Dプリンターで造形したEVのCFRP製ボディ
デトロイトモーターショーで米Local Motors社が出展した(a)。(b)はボディを造形した3Dプリンター。会場で造形をデモンストレーションした。
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 実は、出展したStratiを製造したのは2014年9月にシカゴで開催された米国工作機械見本市*2の会場だった1)。会期中にゼロから造形を開始し、約2日間で造形を完了。その後、部品を組み付けて最終日に会場内で実車走行のデモンストレーションを披露した。自動車のボディ全体という大型の部品を3Dプリンターで一体造形し、実走行可能な状態に仕上げた例はこれまでになかった*3

*2 正式名称は「International Manufacturing Technology Show 2014(IMTS2014)」。通称シカゴショー。2014年9月8~13日に開催された。
*3 実際にはStratiのボディは、いくつかに分割して造形している。大きさというよりも、組み付けが課題となる。

 この際に使った3Dプリンター「BAAM(Big Area Additive Manufacturing)」は、工作機械メーカーの米Cincinnati社やOak Ridge国立研究所(ORNL)などと共同で開発した装置で、熱可塑性樹脂を可動ノズルの先端から吐出する方式、いわゆるFDM(熱溶解積層)方式を採用する*4。最大造形寸法は2000×4000×870mmと巨大。まさにクルマ1台がほぼすっぽりと入る大きさだ。

*4 一般的なFDM方式の3Dプリンターでは樹脂をフィラメント状でヘッド部に供給するが、BAAMではペレット状で供給する。