「透明なスクリーンが突然現れ、そこで映像を見たり、絵や文字を書き込んだりする」。オフィスや学校の未来像としてよく描かれる場面が、決して絵空事ではなくなってきた。映像を空間に浮かべたり、空中に絵や文字を書き込んだりできるような技術が、ディスプレーの国際会議「21st International Display Workshops(IDW'14)」で続出した。

IDW'14で発表された空中ディスプレー
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 ディスプレー技術に革新が起こる。平面の四角いパネルに映像を表示するのではなく、映像を空間に浮かべたり、空中に絵や図を描いたり、文字を書いたりできるようになる。このような新概念のディスプレーの技術発表や開発品のデモンストレーションが、2014年12月3~5日に新潟市で開催された国際会議「21st International Display Workshops(IDW'14)」では目白押しだった。

 いずれもまだ、空中像を浮かべるために、比較的大がかりな装置が必要である。しかし、今後プロジェクター関連技術などが進化すれば、小型化が進み、身近なディスプレーになる可能性がある。早ければ2~3年以内に、業務用途で本格的に使われるかもしれない。

 1897年、テレビの受像管に用いるブラウン管が発明されてから、120年近くディスプレー技術は枠のある画面を前提にしてきた。空中ディスプレーの開発は、この枠を超えて現実世界に映像を映し出し、活用しようとする動きの一環と言える。今後のディスプレーは、映像と現実の境目をなくし、映像を現実のモノと同様、自由自在に扱える方向に進化していきそうだ(図1)。

図1 ディスプレーは従来の枠を超えて進化する
枠のある画面を前提にしてきたディスプレー。この枠を超えて現実世界に映像を映し出す空中ディスプレーへの進化が既に始まりつつある。さらに、そうした映像をユーザーが操作できるインタラクティブなディスプレーや、高速に映像を操作しても遅延を感じさせない「ダイナミックディスプレー」へと進化する。
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大学、企業がこぞって開発

 空中に映像を浮かべられるディスプレーは、さまざまな研究機関や企業が開発中だ。IDW'14でも、異なる特徴を持つ技術の発表が6つあった。(1)映像を空間に浮かべるだけでなく、絵や文字も自然に書き込める空中ディスプレー、(2)フルHD(1920×1080画素)の高解像度の映像を空間に浮かべられる空中ディスプレー、(3)表示装置の小型化を図った空中ディスプレー、(4)車載用途を想定してヘッドアップディスプレー(HUD)技術で映像を空間に浮かべた空中ディスプレー、(5)フルカラーで360度どの方向からでも立体像が浮かんで見える空中ディスプレー、(6)空間に虚像を浮かべるのではなく、霧のスクリーンに実像を投影する空中ディスプレーである。

 以降では、この順に、それぞれの技術の特徴や実現手法を解説する。