デジタルカメラ市場が縮小する一方で、民生のカメラ開発で蓄積した技術やノウハウにラブコールを送る動きが広がっている。カメラ技術者が活躍できる“拾う神”は、医療や自動車、セキュリティーなど、今後の成長領域に多くいそうだ。

 2014年4月1日、オリンパスイメージングで、ある組織が産声を上げた。同社 代表取締役社長の小川治男氏の発案で立ち上がった「IBP推進本部」がそれだ。IBPはImaging Business Platformの略。光学と画像処理という、カメラ事業で培ったコア技術を様々な領域で活用することが同部署の使命である。第2部で紹介した「Open Platform Camera」もその取り組みの1つ。だが、IBP推進本部が見据えるのは民生用のデジタルカメラだけではなく、「BtoBの領域にも積極的に仕掛けていきたい」(同部署の担当者)という。

 ソニーは、「医療の分野に事業進出しているが、オリンパスとの合弁会社には我々のカメラ開発部隊から人材を出した。BtoBには組織を越えて、人材を輩出し、共同あるいは我々が請け負う形で撮像技術を開発している」(同社 業務執行役員 SVP イメージング・プロダクツ&ソリューションセクター 副セクター長 デジタルイメージング事業本部 本部長の石塚茂樹氏)。

 このように、カメラメーカー各社は、カメラ技術を民生以外の市場でも輝かせようと、視野を広げている(「台湾ODMの転身、カメラからスマホ部品や血糖値計に」参照)。特に、医療や自動車、セキュリティーなど、多くの企業が今後の成長市場と位置付ける領域において、カメラ技術に寄せられる期待は大きい(図1)。ある車載部品メーカーの開発者は「民生のカメラで蓄積した技術やノウハウをぜひ活用したい」とラブコールを送る。

図1 民生以外の市場で輝く
図1 民生以外の市場で輝く
様々な分野で、カメラ技術の活用が進んでいる。医療や自動車をはじめとして、今後さらなる市 場の拡大が見込まれている分野でのカメラ技術/技術者の活躍が期待できそうだ。
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 デジタルカメラ市場の縮退が続けば、多くのカメラ技術者は仕事を奪われてしまう可能性が高い。だが、デジタルカメラ市場の外に視線を移せば、様々な領域に“拾う神”がいそうだ。

1兆分の1秒の変化を捉える

 デジタルカメラがけん引している撮像技術の活躍の場として最も期待されるのが、医療・ヘルスケアの領域である。この領域の潜在市場は「1000億ユーロ規模に及ぶ」(オランダRoyal Philips社)とされるほど巨大だ。